水で溶いて使う絵の具はいろいろあります。
よく混同されるのですが、アクリル絵の具とアクリルガッシュは別物です。
水彩絵の具も、透明水彩絵の具と不透明水彩絵の具がありますし、ポスターカラーというのもあります。
単にガッシュと呼ばれる絵の具もあれば、アクリルガッシュもあるので、初心者の方は混乱してしまうかもしれません。
水溶性絵の具の名前が5つも出てきましたので、この記事で整理してみたいと思います。
オマケとして、小学生用の水彩絵の具も入れて6種類を解説します。
この記事で説明する絵の具の一覧です。
1.アクリル絵の具 |
※この記事ではそれそれの絵の具の以下の特徴を整理します
原料、透明性、重ね塗りの可否、耐水性
※個別に説明する前に用語解説をします。
①顔料(がんりょう)
色の素。粉だったり液状だったりします。
②アクリル樹脂
正式にはアクリルエマルジョン、アクリル樹脂エマルジョンと呼ばれるもので、アクリル樹脂を水に溶けた状態にしたものです。
おおざっぱに言えば、アクリル絵の具=顔料+アクリル樹脂です。
顔料をそのまま塗ると乾いたときに剥がれ落ちるので固着させる役割をします。
要は接着剤ですね。
アクリル樹脂はいったん乾くと水では戻らず、強固になるので重ね塗りが可能になります。
③アラビアゴム
またの名をアラビアガムといって、水溶性の糊です。
これも顔料を固着させる接着剤の役割をします。
おおざっぱに言えば、水彩絵の具など=顔料+アラビアゴムです。
アラビアゴムは乾いても水で濡らすとまた軟化するので、しつこく重ね塗りすると溶け出してしまいます。
それでは個別に解説します。
1.アクリル絵の具
原料:顔料(色の素)+アクリル樹脂
透明性:色により異なり、透明、半透明、不透明の3種類がある
重ね塗りの可否:乾けば可
耐水性:強い
2.アクリルガッシュ
原料:顔料(色の素)+アクリル樹脂
(アクリル絵の具より顔料の割合が高い)
透明性:不透明
重ね塗りの可否:乾けば可
耐水性:強い
3.透明水彩絵の具
原料:顔料+アラビアゴム
透明性:透明
重ね塗りの可否:不可に近い。
乾いても濡らすと溶け出してしまう
耐水性:弱い
4.不透明水彩絵の具(ガッシュ)
※単にガッシュと呼ばれることもあります。
アクリルガッシュと紛らわしいので、買うときは注意が必要です。
原料:顔料+アラビアゴム
(透明水彩絵の具より顔料の割合が高い)
透明性:不透明
重ね塗り:不可(ただし、できなくもない)。
基本は乾いても濡らすと溶け出してしまう
耐水性:弱い
5.ポスターカラー
原料:顔料+アラビアゴム
(上記2つの水彩絵の具の顔料は鉱物系ですが、ポスターカラーは染料系(インク系)なので安価。もちろん製品によって例外はあります)
透明性:不透明
重ね塗り:不可に近い。乾いても濡らすと溶け出してしまう
耐水性:弱い
6.小学生用の水彩絵の具
原料:顔料+アラビアゴム
透明性:不透明(少し透明性あり)
(完全に不透明にしてしまうと下書きが見えなくなるので、小学生用に調整したようです)
重ね塗り:不可(ただし、できなくもない)
基本は乾いても濡らすと溶け出してしまう。
耐水性:弱い
補足1
①一般的に不透明の絵の具はベタ塗りが容易で、イラストやデザイン系のものに向いています。
②透明系の水彩絵の具は白をあまり使わずに「紙の白」を利用するようにしたら透明感が損なわれずに活かせます。
③にじみやぼかしの技法は、上記すべての絵の具で可能ですが、やはり透明水彩絵の具が一番キレイという方が多いようです。
④小学生用の水彩絵の具は、重ね塗りに関して、次のように指導されるそうです。
「重ね塗りするなら明るい色の上に暗い色のみ。先に暗い色を塗った後に、明るい色を重ねても難しい」。
要は暗い色を使えば上から塗りつぶせるけど、逆は難しいよということですね。
⑤アクリル絵の具は油絵の具みたいな厚塗りから、水彩絵の具みたいな薄塗りまで多用な使い方ができるので、一番オールマイティといえます。
⑥ココには出てきませんでしたが、100均のアクリル絵の具やアクリルガッシュは染料系(インク系)の顔料なので、耐久性、耐光性がメーカー品より劣ります。
それでも安価なので初心者の練習用には魅力的かもしれません。
補足2
アクリル絵の具は水彩絵の具みたいにも描けるし、油絵の具みたいにも描けるのでオールマイティに使える画材です。
ただし、水彩絵の具には水彩絵の具にしか出せない色みや味わいがあります。
他の絵の具も同様です。
自分に合う絵の具が見つかるとぐっと世界が広がるので、いろいろ試してみてください。
まとめ
この記事で説明した絵の具の一覧を再度載せます。
1.アクリル絵の具
2.アクリルガッシュ
3.透明水彩絵の具
4.不透明水彩絵の具(ガッシュ)
5.ポスターカラー
6.小学生用の水彩絵の具
この記事ではそれそれ以下の特徴を述べてきました。
原料、透明性、重ね塗りの可否、耐水性
重ね塗りしたい人、修正を何度もしたい人にとってはアクリル絵の具やアクリルガッシュは便利です。
水彩絵の具の淡くて優しい色合いが好きという人には重ね塗りができるかどうかは大切ではないかもしれません。
といっても水彩絵の具がまったく重ね塗りできないという訳ではありません。
水をほとんど付けずにチューブから出したままの状態で、ササッと重ね塗りすれば、けっこう乗ってくれます。
しつこく何度も筆を往復させると下が溶け出してしまうので、ササッやる必要があります。
グラデーションに関してはアクリル系でも水彩系でもできますし、ガッシュ系でもできます。
ただ出来上がりの風合いが違うだけです。
あとは好みの問題ですね。
人物画は水彩絵の具で描くのはかなりの熟練度が必要な気がします。
自然なグラデーションに微調整するのは、なかなかやり直しのきかない水彩絵の具では難しいからです。
皆さんも水彩画というと風景や花などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
顔はほんの1ミリずれただけでも表情がまったく違ってくるので厳しい分野です。
筆者はアクリル絵の具で油絵ふうに描くのが好きなので、何度でも修正しながら仕上げていきます。
納得するまで修正するのは、こだわりというか根性の世界です ^^;
画才の8~9割は努力と根性、千本ノックと思っているので、才能ないと諦めている人に、そんなことないよ、大丈夫だよと発信していけたらと考えています。
(以上です)