黄金比(おうごんひ)とは、古代ギリシャ以来、理想の比率と言われ、長方形の縦横比が「1:1.618033……」になるものです。
線分の場合は、ある線分を a、 b の長さで2分割するときに、a : b = 1:1.618……となる比率をいいます。
数学的な難しいことはさておき、それを構図に利用するときの方法を解説します。
この記事で説明する項目の一覧です。
1.黄金分割点の求め方 |
それでは個別に解説していきます。
1.黄金分割点の求め方
A
C
D
ここでは横長の長方形とします。まず始めに対角線を引き、別の頂点からその対角線に向かって垂直な線(垂線)を下ろしたとき、その交点が黄金分割点になります。
例えば左上の頂点Aから右下の頂点Cに対角線を引いたとき、左下の頂点Dから対角線に向かって垂線を下ろすと、その交点が黄金分割点dになります。また頂点Bからも垂線を下ろせば交点が黄金分割点bになります。
対角線は右上のBから左下のDに向かっても引けるので、同じように垂線を下ろせば、全部で4つの黄金分割点ができます。
2.黄金分割の使い方
4つの黄金分割点のどれかに主役となるモチーフを配置します。
またはモチーフの一番着目して欲しいポイント、例えば目を黄金分割点に配置します。
モチーフ全体を黄金分割点に配置する場合と、モチーフのパーツを配置する場合が考えられます。
3.黄金分割のメリット
①奥行きが出せる
モチーフ全体を黄金分割点に配置した場合、中央から外れているので、中央付近は奥行きがあり、背景を広くとることができます。
②空いた空間に働かせる
人物が空いた空間のほうを見るようにすれば、動きや流れ、余韻を感じさせます。鳥であればクチバシのある方向、自動車であればフロントの方向に空白を作るということです。
③脇役を引き立て役にできる
また脇役を別の黄金分割点に小さめに配置することで、主従関係ができ、主役を引き立てると共に、奥行きを表現できます。
4.三分割構図との違い
三分割構図とは、画面を縦横ともに三等分して9コマに分ける線の交点にモチーフを配置するものです。
黄金分割構図と並べて見ると、交点どうしが非常に近くなっています。ほとんど同じと言ってもいいくらいです。
例えば人物画の場合、目を交点に置くなら、違いはなんとか分かりますが、もう少し引いて(ズームアウト)して体全体を描くときに頭を交点に置く場合は、それが三分割構図なのか、黄金分割なのか分かりにくくなります。
描いている本人は意図して置いているので分かっていますが、それが上手く機能しているかどうかとなると怪しくなってくるはずです。
では、どうやって使い分ければいいか?
三分割構図は水平か垂直の線がハッキリしているもの、
黄金分割構図は対角線を意識できるもの
と使い分けてみましょう。
例えば、人や桜の木がポツンと大地に立っていれば、垂直線ができています。
水平線は目線の高さですので、嫌でも確定します。
これだけでも垂直線と水平線の両方ができています。
この状態で、こんもり丸い桜の枝ぶりや人の頭を黄金分割点に配置したところで、いまいち意図は伝わらないと思いませんか?
それなら垂直線と水平線を活かして、いさぎよく三分割構図にしたほうがシンプルで安定します。
逆に、対角線となるような何らかの線があって、その上にモチーフがあるなら、別の頂点から垂線を下ろした場所の交点になるように上下左右にフレーミング(枠取り)して、収まりのいい場所を見つけましょう。
作品例
フランシスコ・デ・ゴヤ「1808年5月3日」
※スペイン独立戦争(フランスから独立を守った戦争)を描いた作品。
ナポレオン軍の占領に反発し蜂起したマドリード市民を銃殺しようとしている様子。
市民たちは、のちにゲリラ戦を仕掛け、独立を守ったとされる。
5.黄金比構図との違い
黄金比を使った構図はもうひとつあります。
黄金らせんを利用した黄金比構図です。
こちらは黄金らせんの曲線に沿うような曲線があるときに使うと効果的です。
葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」の大波は黄金らせんの曲線に沿っていると言われています。
モチーフの配置としては、黄金分割構図は対角線上の交点に置いて、黄金らせん構図はらせんの終点にモチーフの一番目立つ部分を配置すると、視線が誘導されやすく引き立たせることができます。
まとめ
黄金分割構図は三分割構図と似ている部分がありますが、対角線を意識させるような強い線があるときに使うと、より効果的です。
対角線上の交点にモチーフを置くと、よりテーマを伝えやすくなりますが、多少ズレても構いません。
厳密に配置するより、全体のバランスを見ながら、しっくりくる所に置くと気持ち的にも落ち着くはずです。
(以上です)