アクリル絵の具の基本

■アクリル絵の具とアクリルガッシュの違い

2021年9月19日

アクリル絵の具とアクリルガッシュの違い

よく混同されるのですが、アクリル絵の具とアクリルガッシュは別物です。
間違って買う人もいるので、ココでざっくりでも違いを覚えていってください。

 

この記事で説明する項目の一覧です。

1.結論、2つの主な特徴
2.共通する特徴
3.アクリル絵の具の特徴
4.アクリルガッシュの特徴

 

それでは個別に解説していきます。

1.結論、2つの主な特徴

素材や特徴などを解説する前に結論です。2つの特徴だけ先に描きます。

・アクリル絵の具……透明。長期保存向き

・アクリルガッシュ……不透明。一時的な使用向き

自分で描いたものを飾ったり、人にプレゼントしたりするならアクリル絵の具で描いたほうがいいです。

デザインなどで一時的に使うだけ、とにかく練習用というならアクリルガッシュでもいいでしょう。

たまに併用したくなったり、アクリル絵の具とアクリルガッシュを混ぜて使いたくなったりするかもしれません。
とくにある色が無くなったとき、応急処置的に使うケースもあるかと思います。
そういうときに備えて、それぞれの特長、メリット・デメリットをココで押さえていってください。

ちなみにアクリル絵の具とアクリルガッシュを混ぜても、化学反応などは起きませんので、変色などの心配はありません。
ただし両者の良さを打ち消し合う可能性があるので、それを理解した上で使ったほうがいいでしょう。

それでは特徴などを解説します。

 

2.共通する特徴

① 乾くと水に溶けない
乾くのが速く、洋服などに着いて一度乾いてしまうと水では落ちません。
専用の溶剤などを使えばある程度落ちることもありますが、油断は禁物。
また絵の具のチューブの蓋を開けっ放しにして放置すると中までカチカチに固まってしまいます。

 

② 重ね塗りができる
乾くと水に溶けないという特徴があるので、乾けば何度でも上塗りができます。
これは水彩絵の具やポスターカラーにない特徴です。
描き間違っても乾くまで待つか、急ぐときはドライヤーなどで乾かせば、重ね塗りできるので気が楽です。

 

③ 耐水性。屋外のものにも塗れる
これも水に溶けないという特徴と重なりますが、乾けば耐水性になるので屋外の壁画などに使えます。

 

④ 乾くのが速い
数分~10分間程度で乾いてしまうので、色をキャンバス上で混ぜたり、グラデーションにしたりするのはのんびりできません。
グラデーションは隣り合う色どうしを混ぜる必要があるので、乾くとできなくなります。

メリットとしては乾けば修正も重ね塗りもできるので、何日も待つ必要もありません。
(油絵の具は乾くのに最低でも1週間くらいかかる)

速く乾き過ぎて困るという場合は、リターディングメディウムという乾きを遅くする添加剤も売られているので、どうしても気になる場合は購入を考えてもいいでしょう。

 

⑤ 発色がいい
原料は共に顔料+アクリル樹脂で、アクリル樹脂は乾くと透明になり、顔料の色がそのまま現れるのでキレイな色になります。

 

⑥ 水彩絵の具みたいな薄塗りも、油絵みたいな厚塗りもできる
水を多めにして溶けば、水彩絵の具みたいなニジミやボカシの技法も使えます。
白い絵の具を使わず、紙の白を活かして薄塗りで爽やかな画風にすることもできます。

またチューブから出したそのままか、水を少なく溶いて塗れば、油絵の具みたいにある程度は盛り上げが可能です。
でも、やり過ぎるとヒビ割れの原因になるので、モデリングペーストやジェルメディウムなどの添加剤を使いながら、一度でやるのではなく重ね塗りをしながら少しずつ盛り上げるといいでしょう。

 

⑦ 紙以外にも色んな素材に描ける
紙以外の素材、例えば石、木、布、金属、ガラス、プラスチック製品などに塗れます。
ただし、ツルツルした表面、例えばプラスチックや金属やガラスなどは剥離してしまう可能性が高いので、紙ヤスリなどで表面にキズを付けたほうがいいです。
また専用のプライマー(下地材)も販売されているので、用途に応じて使ってみるといいでしょう。

 

3.アクリル絵の具の特徴

①透明性
不透明の色もありますが、透明色も多いので、下の色を活かした重ね塗りができます。
青の上に黄色を重ねると緑になりますが、最初から緑を塗るのとは違った透明感と奥行きのある味わいになります。

透明、不透明に関しては別記事で詳しく解説しているので、よかったらどうぞ
→「アクリル絵の具には透明と不透明があるの? 5つの質問に答えます

 

②乾くと色が少し暗くなる
塗った直後より落ち着いた色になるとも表現できます。
ある程度、計算しながら明るめの色を置くという方法もあります。

 

③筆跡やムラが目立ちやすい
アクリル絵の具の透明性からくるものですが、一度にたっぷり絵の具を塗ると、筆の跡がスジ状に残り、その後何度重ね塗りしてもなかなかその盛り上がりをなだらかにできないということがあります。

色ムラに関しても、ベタ塗り(平塗り)をする場合、慣れないうちは紙の白が目立つ所とそうでない所がハッキリするので、根気よく重ね塗りしましょう。
またそうすることにより深みのある色みになります。

 

④艶(ツヤ)がある
発色のよさとの相乗効果で、キレイな艶のある画面が作れます。
さらに艶を増したいときは添加剤としてのジェルメディウムや、グロスポリマーメディウム、仕上げのニスのような役割をするバーニッシュ(表面保護剤)もあるので、目的や用途に応じて使い分けるといいでしょう。

 

4.アクリルガッシュの特徴

パッケージに「GOUACHE」と書かれています。

①不透明性
基本的には不透明で、下の色は透けません。
多めの水で薄く溶いても、キレイな色にはならないので、下の入色を活かした重ね塗りには向きません。

その代わりメリットとしては隠蔽性、遮蔽性が高く、失敗しても乾けば重ね塗りできるのである程度は気楽に塗れます。

 

②乾くと発色がよくなる
アクリル絵の具と逆で、発色がよくなるのでビビットや派手な感じの色合いを望む場合は使い勝手がいいでしょう。

 

③筆跡やムラが目立たちにくい
ベタ塗りは楽です。均一に塗りたい場合、よっぽど水で薄く溶かない限り、何度も重ね塗りする必要がありません。

 

④艶(ツヤ)消し
落ち着いたマットな色合いです。
イラストやデザインなどの均一なベタ塗りに向きます。
光を乱反射させるための粒子が混ぜられているためです。

使い方によっては変化がなく、ベタっとした印象になりがちですが、もともとベタ塗り(平塗り)用、ムラなくするために開発された絵の具と理解して、使い分けるといいでしょう。

 

⑤乾くと境界線がハッキリしてしまう
乾いた後で輪郭をぼかそうとしても、上に塗ったガッシュの境界線がハッキリしているため上から色紙かシールか何かを貼り付けたような感じになってしまいます。
輪郭などをボカシたいなら、乾かないうちにするしかありません。

その一方でアクリル絵の具は透明で下地が透けるので、乾いた後からでもボカシの技法はしやすくなっています。

 

まとめ

アニメのセル画みたいなベタ塗りがしたい方、デザインなどの一時的な利用で長期保存を考えていない方はアクリルガッシュでもいいですが、そうでない方はアクリル絵の具のほうがオススメです。

塗りムラの気になる方、何度も重ね塗りしたくない方はアクリルガッシュのほうが楽です。
透明感や色の奥行きを楽しみたい方はアクリル絵の具のほうがオススメです。

 

補足
アクリル絵の具の特徴などに関しては別記事で解説しているので、よかったら読んでいってください。
→「アクリル絵の具とは 特徴10選、使い方、初心者むけの理由など

 

               (以上です)

 

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