画材・道具

他の絵の具との併用、重ねる、混ぜるときの注意点など(後編)

2022年1月25日

他の絵の具と混ぜる

アクリル絵の具を、他の絵の具類と併用できないかと考える人は多いようなので、まとめてみました。
その後編です。
アクリル絵の具と、油絵の具や水彩絵の具との併用は前編で解説しています。

前編はコチラ

 

この記事で説明する項目の一覧です。

3.クレヨン
4.パステル
5.色鉛筆
6.マーカー、カラーインク

 

それでは個別に解説していきます。

3.クレヨン

クレヨン、スクラッチ

スクラッチアートなどが考えられます。
先に色を塗っておいて、黒でカバーを掛けるように塗りつぶした後で、竹串などで引っ掻いてカラフルな絵ができる子供のときにやったやつです。
2通りあるので個別に解説します。

 

①先にアクリル絵の具で色を塗っておいて、上から黒いクレヨンで塗りつぶす

これが無難です。昔ながらの方法です。
アクリル絵の具はドライヤーで乾かしてしまえばすぐに上からクレヨンを塗れます。

デメリットとしては、完全に隙間なくクレヨンで塗りつぶすのはなかなかの労力です。
枚数が多くなるとさらに大変ですよね。
あとスクラッチするときにクレヨンで手が汚れるというのもあります。

 

②先にクレヨンで塗っておいて、黒いアクリル絵の具で塗りつぶす

クレヨンは油性ですので、理屈的には水溶性のアクリル絵の具は乗りません。
ですがチューブから出したままに近い、水でほとんど薄めていないアクリル絵の具は意外と乗ってくれます。

コツはアクリル絵の具を何回か重ね塗りすること。
縦方向に塗った後、横方向からも塗ると隙間なく、ムラなく塗れます。
幼稚園や保育園で何枚も塗らなきゃいけないとき、黒のクレヨンで塗りつぶすのはかなり大変ですが、アクリル絵の具を刷毛で塗れば、すんごく楽です。

デメリットとしてはアクリル絵の具の皮膜は細かい線でしか引っ掻けないということです。
プラスチックの皮膜をしているようなものなので、太い線で引っ掻くと周りも取れてしまう可能性があります。

もの凄く精密な絵、繊細な線を期待しているなら従来の黒いクレヨンで塗りつぶすほうがいいかもしれません。
でもそこまで要求しないよという場合は、アクリル絵の具を刷毛で塗るのは圧倒的に楽です。

 

4.パステル

パステル

アクリル絵の具を先に塗って、その上でパステルを塗るのが基本です。逆だとアクリル絵の具にパステルが溶けてしまいます。
塗り潰すから構わないという場合は、先にパステルで塗った上にアクリル絵の具なら普通に塗れます。
弾かれることはありません。

パステルはアクリル絵の具が乾いた上に直接塗るか、粉状にして振りかけるか、指やティッシュや綿棒で伸ばすなどすると、いい感じにぼやけて優しい色合いになります。
アクリル絵の具が乾いていないうちに粉状にしたパステルを振りかけるのも面白いですね。
完成したら、粉が飛ばないようにパステル用のフィクサチーフで安定させましょう。

 

5.色鉛筆

色鉛筆

一口に色鉛筆といっても油性と水性があります。
小学生のときに使っていた色鉛筆は油性です。
油性ですので、色鉛筆で塗った後に筆で水を塗ってもにじみません。
ということは弾くということです。

最近、流行ってきた水性色鉛筆は着色した後に筆で水を塗るとジワジワとにじんでくれます。いい感じのボカシにもなります。

余談ですが、厳密にいうとニジミとボカシは違います。

ニジミ……先にたっぷりの水を塗り、その後で絵の具などを塗り、色を広げる技法。

ボカシ……先に絵の具などで色を塗り、後から筆などで水を塗り、色を広げる技法。

話を戻します。
色鉛筆には油性、水性がありますが、いずれもアクリル絵の具を先に塗って、その上で色鉛筆を塗るのが基本です。
逆にすると、油性色鉛筆ならアクリル絵の具を弾いてしまいますし、水性色鉛筆は溶けてしまいます。

アクリル絵の具を先に塗って、しっかり乾かした後で色鉛筆を使うと、広い面積を塗るのが楽なアクリル絵の具の良さと、繊細で優しい表現ができる色鉛筆の良さがいい感じのコンビネーションで魅せてくれます。

 

6.マーカー、カラーインク

①マーカーには油性と水性があります。
最近、人気のコピックは油性ですので、先に塗ると、上から重ねたアクリル絵の具は弾かれることになります。
ただチューブから出したままに近い、薄めていないアクリル絵の具はけっこう乗ってくれるので、ハイライトを入れたい所とかに使うのはいいかもしれません。

水性のマーカーの上ならアクリル絵の具はガンガン塗れます。
アクリル絵の具の上に水性のマーカーは、プラスチックの上に塗るようなものなので厳しいかもです。

 

②カラーインクには顔料系と染料系、耐水性と非耐水性があります。

カラーインク

透明度と彩度が高いので、キレイな発色が特徴です。
インクの原料は顔料と染料がありますが、流通しているのはほとんど染料系です。
そのため耐光性が弱く、室内に展示していても退色してしまいます。
長期保存を考えているなら顔料系がいいでしょう。

アクリル絵の具との併用はどちらを先に塗っても構いません。
カラーインクは耐水性であれば、アクリル絵の具を上から塗っても溶けてにじむことがありません。

つけペンやガラスペンで繊細な線画を描いた上に、多めの水で溶いたアクリル絵の具で淡く着色すると、インクのほれぼれするような発色と、アクリル絵の具の柔らかな色みがいい感じのコンビネーションで魅せてくれます。

 

まとめ

油絵の具とアクリル絵の具との併用は、アクリル絵の具を下書きの細い線でするくらいなら可能です。
油絵の具で塗った上に、アクリル絵の具を塗るのはNG。
油絵の具とアクリル絵の具をパレット上で物理的に混ぜて使うのは水と油なので、もっとNGです。いずれ分離します。

水彩絵の具やポスターカラーとアクリル絵の具は同じ水溶性なので馴染みやすい性質ですが、順番は水彩絵の具が先、アクリル絵の具が上です。
逆にするとプラスチックに水彩絵の具を塗るようなものなので、いずれ剥がれます。

クレヨンはロウソクの蝋、色鉛筆は油性のものがあるので、アクリル絵の具を上から塗るとき弾かれる場合があります。

パステルは上下どちらもいけますが、後から塗ったほうがせっかくの柔らかい色を活かます。

あとマーカーやインクもありますが、油性だと注意が必要です。
さらにカラーインクは耐光性に劣るので、長期保存を考えるならアクリル絵の具と併用しないほうがいいでしょう。

 

この記事で絶対に止めたほうがいいと書いたこと以外は、じゃんじゃん試してみてください。
試して上手くいかなければ次の方法を考えればいいだけです。

重ね塗りの順番も、ここで書いた逆をわざとやってみるのも経験値が増えるので無駄にはならないはずです。

失敗するのも経験です。
アクリル絵の具でぜひ遊んでみてください。

 

(以上です)

 

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