構図とはモチーフまたは色の配置、画面の構成であり、視線を誘導し、テーマを伝える仕掛け、骨組みのことです。
絵画で使えそうな構図を集めてみました。
これ以外にも構図は幾らでも出てきそうですが、ここにあるのを一通り押さえておけば、風景画などの構図が思いつかないとき、どれかがきっと役立ってくれるはずです。
また構図は単体で使うべきという決まりがある訳ではありません。
組み合わせることでもっと魅力的になる場合があるので、組み合わせ構図も5つの例を挙げてみます。
この記事で説明する項目の一覧です。
【1】基本的構図 【2】アルファベット構図 【3】組み合わせ構図の例5選 【4】すべてに共通するコツ、考え方 |
それでは個別に解説していきます。
【1】基本的構図
1.三角構図
安定感と力強さを感じさせる構図です。
静物画の場合は基本中の基本の構図。
ピラミッドや富士山、末広がりのスカートの女性などの単体で三角形になっている構図もあれば、3点モチーフで三角形を構成する場合もあります。
逆三角形の構図は不安定感、緊張感、動き、上部に広がる開放感などを感じさせます。
※三角構図の詳細記事はコチラ
→ 「三角構図 決して外せない構図の基本2」
2.三分割構図
①水平方向の3分割
近景・中景・遠景などに使った場合、安定感と奥行きをさせます。
近景・中景・遠景を3等分にする必要はありません。
一番訴えたいモチーフに一番面積を割くとテーマが伝えやすくなります。
②縦も横も3分割し、画面を9等分
モチーフを線上または交点上に配置します。
簡単にバランスがとれて、画面整理やしやすく初心者に扱いやすい構図です。
※三分割構図の詳細記事はコチラ
→ 「三分割構図 決して外せない構図の基本1」
3.黄金らせん構図
黄金比の長方形の中にある弧が、カタツムリやアンモナイトの殻みたいに螺旋(らせん)状に半径が小さくなって、最終的に一番小さく収束している所、終点に一番注目してほしいポイントを配置する構図です。
モナ・リザは口元にらせんの終点が来ています。
フェルメールの「真珠の首飾りの少女」は左目にらせんの終点が来ています。
4.黄金分割構図
画面に対角線を引き、別の頂点から対角線に垂直線を下ろした交点にモチーフを配置する構図です。
「斜線・対角線構図」とも呼ばれるようです。
三分割構図の4つの交点と似ていますが、三分割は縦横を意識する線があるとき、黄金分割は対角線を意識する線があるとき、という使い分けをすると混乱せずにすみます。
ディエゴ・ベラスケス「ラス・メニーナス」
※パッと見の主役は中央のマルガリータ王女ですが、真の主役は鏡に映っている王様。
王様夫妻と召使たちを同じ画面に描くことは許されないため、鏡に映った形で登場させています。
発注主は王様でしょうから、さすがと言わざるを得ない演出です。
フランシスコ・デ・ゴヤ「1808年5月3日」
※スペイン独立戦争(フランスから独立を守った戦争)を描いた作品。
※黄金分割構図の詳細記事はコチラ
→ 「黄金分割構図 黄金比を使った構図」
5.対角線構図
マールテン・ド・フォス「エウロペの誘惑」
ルーベンス「ヴィーナスとアドニス」
当たり前ですが、対角線は画面上でもっとも長い直線になるため、力強い動きや奥行き、メリハリを表現できます。
単体のモチーフを対角線上に配置することもあれば、複数のモチーフを対角線上に並べることもあります。
一概には言えませんが、右肩上がりは躍動感、右肩下がりは静けさや悲しみを表現するのにも使えます。
※対角線構図の詳細記事はコチラ
→ 「対角線構図とは 効果と使い方など」
6.放射線構図
ラファエロ「アテナイの学堂」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」
ある一点から放射状に伸びる直線は開放感や躍動感を表現できます。
一点遠近法で水平線状から伸びる場合もあれば、木の幹を下から見上げた場合の枝の拡散する伸び、太陽の光の束が雲間から広がる様子などはドラマチックでパワーや開放感を表現できます。
放射線の中心部に視線を集める効果があるので、そこに主たるモチーフを置けば、テーマを伝えやすくなります。
※放射線構図の詳細記事はコチラ
→ 「放射線構図とは 意味と効果」
7.二分割構図
クールベ「波」
縦または横に画面を二分割した構図。
横に二分割する場合は水平線(目線の高さ)がよく使われます。
シンプルで分かりやすいですが、その分単調になりやすいので工夫が必要です。
8.シンメトリー構図
左右対称、または上下対称の構図。
水面に映った木々やビル群などはリフレクション構図と呼ばれます。
ビルの左右に道路が伸びていく様子なども左右対称になります。
9.日の丸構図
モチーフを中央にドンと配置した構図。
素人が何も考えずに配置した構図と間違われないように、背景に何らかの線を見つけるか、加えるかして別の構図と組み合わせて使う方法もあります。
10.水平線構図
風景画の場合、もっとも基本となる構図。
上から3分の1の所に水平線を配置して、下3分の2を海などの々とした光景を表すと三割構図と同じになりますが、水平線の位置は自由に決められるのがこの構図です。
モチーフの広がり、のびやかさを表現できます。
11.垂直線構図
白樺や杉、竹などの林や滝などの垂直線を利用した構図です。
上下方向の伸長感、静けさなどの表現に使えます。
縦の長さに変化があるとリズム感が生まれます。
ポール・ゴーギャン「かぐわしき日々」
人を使って垂直線構図にした珍しい例。
よく見ると、右手前の大きな女性と左から2番目の女性が似たような恰好になっているので、視線が誘導されます。
また左端と右端の女性が共に座っているので対比の関係にあります。
視線が画面全体を巡回するように、配置をすごく考えて構成していることが分かります。
12.斜線構図
尾根や稜線が重なるように繰り返されると斜線の平行線ができて、動きや流れが生まれます。
奥に行くほど色が変化することで、奥行きも表現できます。
13.曲線構図
奥行きと優美さ、穏やかさなどを表現できる構図です。
大きく曲がった河川や道路、海岸線などが考えられます。
小さいものでは食器のカーブなどがありますし、テーブル上にリンゴやカップを点々と曲線を描くように配置するなどの使い方が考えられます。
曲線により画面全体に柔らかさと動きが生まれます。
14.パターン構図
花々やウロコ雲、羊雲、連なる山々、杉林などの生み出すパターンは繰り返しのリズムや統一感を生みます。
15.トンネル構図、額縁構図
葛飾北斎「遠江山中」
シスレー「セーヌ河畔の村」
トンネルの先の風景に視線は誘導されます。
四角や丸の枠の先にモチーフがあれば額縁構図となり、その先の景色が強調されます。
トンネルは人工物だけではありません。
銀杏並木や桜のもあれば、生い茂った葉がトンネルになることもあります。
トンネルや額縁はその外側が暗いと、中央部のモチーフが余計に明るく感じ、静けさや落ち着きも表現できます。
16.対比構図
カラバッジョ「聖マタイの召命」
モチーフを対比させ、対立構造があるように見せる構図。
明暗の対比、色の対比、大きさの対比、老いと若き、生と死、豊かさと貧しさ、暖かさと寒さ、賑やかさと寂しさなどいろんなパターンが考えられます。
緊張感や静けさを表現できます。
※長くなったので、ページを分けます。
(つづく)
(後編はコチラ)