アクリル絵の具はさまざまな質感の表現に適した画材です。
モチーフの質感、表面の状態をしっかり表せると、より本物らしく見えます。
まずはモチーフをしっかり観察することが必要で、それにより微妙な凹凸や陰影、光り具合が見えてくるはずです。
この記事では素材別に質感を描き分けるコツなどを紹介していきます。
この記事で説明する項目の一覧です。
1.硬いもの、柔らかいもの |
それでは個別に解説していきます。
1.硬いもの、軟らかいもの
①硬いもの
明るく白飛びした所以外の輪郭はしっかり描く
明暗をハッキリとさせる
光沢のあるものはコントラストを強く。
金属は平面なら均一に塗って一部に光沢を帯状などで入れ、曲面なら規則的なグラデーションで描く。
②軟らかいもの
輪郭線の太さにブレがある
明暗の差がゆるやか、グラデーションになっている
光沢のあるものはボンヤリとした境目で描く
2.肌、皮膚
ものすごく近づけば、若い人でも微細なシワがありますし、毛穴、産毛もありますので極細の面相筆などで描き込む必要が出てきます。
もし、そうでなければ基本的には滑らかなグラデーションで表現します。
気をつけるのは顔の場合は頬骨、胴体は肋骨と腰骨、手足は筋肉が内側に存在するのを意識してグラデーションをつけることです。
手足は単純化すれば円柱ですが、実際は一方向のグラデーションという訳ではなく、いろんな方向の起伏があります。
骨格と筋肉の形を押さえておきましょう。
あと顔は皮脂でテカリがあるので、弱めのハイライトを入れると立体感も出ます。
また顔をアクリル絵の具や油絵の具で塗る場合、鉛筆デッサンと違って、何度も重ね塗りすると肌の滑らかさがなくなり、ザラザラした感じになるので、ある程度は簡略化してサッと切り上げたほうがキレイな仕上がりになります。
ルーベンスなどの巨匠も近くで見ると大胆な筆致でササッと描いているのに、遠くで見ると滑らかなグラデーションになっています。
省略の美学ですね。
塗りのスピード感も意識しましょう。
3.石、岩
筆に水をほとんど付けずにアクリル絵の具そのままの状態で塗って、かすれさせると石やコンクリートのざらついた感じが出ます。
岩はペインティングナイフのエッジでザッと横に走らせて、所々かすれさせると微妙な凹凸が表現できます。
さらに表面のザラザラ、ゴツゴツ感を出したいなら、スパッタリングでアクリル絵の具の粒子を飛ばすという方法もあります。
この際、余計な所に飛ばないようにマスキングしたほうがいいでしょう。
4.水
水の表情は千差万別なので一概に言うのは難しいですが、例えば静かな湖や池などの場合は、まず全体を淡く着色して、その上から白を乗せて水面のキラキラを表現する方法があります。
白をベタっと乗せるのではなく、横長の楕円形の粒々にしましょう。
手前の楕円は上下幅を広めに、奥ほど狭くして最終的には線になるようにします。
遠近法ですね。
水面を盆地の連続というふうに例えれば、平地を取り囲む山々の頂上を結んだ丸い線だけ白線で描くという方法もあります。
これも上記と同じように手前は円に近い横長の楕円形で、奥ほど縦に潰れた楕円形になります。
5.ガラス
①窓みたいな平面
透けている所と、光を反射している所をクッキリと描き分けます。
透けている所は向こう側の景色を描き、反射している所は白か薄い灰色で塗りつぶします。
②コップみたいな曲面
明るい所と暗い所のコントラストをハッキリさせます。
中央部分は表面に何かが写り込んでいる場合と、向こう側が透けている場合があります。
写り込みなら鏡なのでハッキリと、透けているなら薄い灰色などを少し混ぜてややぼんやりと描きます。
油絵みたいに厚塗りせずに、水を多めにしてサラッと塗りましょう。
いずれもコップの両端の内側は歪んで曲がって見えるはずです。
6.髪、毛
ベースとなる濃い色をまず塗って、その上に面相筆で流れに沿って薄めの線を引いていきます。
①茶髪の場合
まず黒などで薄っすらとベースとなる色を塗っておいて、乾いた後で茶髪を乗せていくという順番です。
なぜベースとなる色を先に塗るのかというと、色に段差ができることで立体感が出せるからです。
最初から茶髪の色だけで始めると、塗れば塗るほど、ベタっとした感じになって線が分からなくなるからです。
茶髪を塗り終えた後で、白っぽい茶色または薄い黄色で光沢を入れて光らせると、さらに立体感が出ます。
②逆に黒髪の場合
ベースとなる色を灰色にして、その上に黒で細い線を引いていき、所々の黒髪に白っぽいハイライトを入れると、黒線のないところは奥まった部分だと認識してくれます。
③動物の毛の場合
濃い色をベースに先に塗って、その上に明るい毛の色を塗るようにします。
明るさを二段階にして、2層構造にすれば、さらに立体感が出ます。
7.布
シワを描けば、手っ取り早く布に見せることができますが、そうでない場合はグラデーションを柔らかく、穏やかに変化させるのがコツです。
例えば金属の円柱のグラデーションは一方向だけの変化ですが、布の場合はいろんな方向から変化して、拡散している感じです。
大きなシワとシワの間も微細な凹凸があります。
輪郭線も柔らかく、太さも微妙に変化させると、よりリアルになります。
まとめ
質感の表現は観察することが第一ですが、やり過ぎなくらいオーバーに表現すると、素材が伝わりやすくなります。
硬いものはゴツゴツ・クッキリと、柔らかいものは複雑なグラデーションや輪郭線のぼかしなども利用してみましょう。
逆の例えになりますが、人の肌を均一のグラデーションで塗ると金属っぽくなります。
皮膚の下には筋肉があるので、歪ませると柔らかさが出てきます。
ある程度お約束みたいなものもあるので、それを利用することで鑑賞者は、あ~あの素材だなと思ってくれます。
補足
ガラスや水については別記事でも解説しているので、よかったらどうぞ。
→「透明感を出す方法3選、窓や海など透明な物の描き方」
(以上です)