黄金比(おうごんひ)とは、古代ギリシャ以来、理想の比率と言われ、長方形の縦横比が「1:1.618033……」になるものです。
黄金比は昔から絵画や建築に使われてきました。
これから自分で描く場合、利用できるケースがあるはずなので、この記事を読んで頭の片隅に入れておいてください。
この記事で説明する項目の一覧です。
1.黄金比の概要と例 2.黄金比の使い方 |
それでは個別に解説していきます。
1.黄金比の概要と例
①概要
黄金比は1:1.618の比率、または約5対8の比率のことです。ちょっと難しくなりますが、線分を分けるときa:b = b:(a + b)が成り立つ関係のことをいいます。
黄金比を発見したのは古代ギリシャの数学者エウドクトスで、その後ペイディアスがパルテノン神殿に使ったと言われています。
黄金比の長方形(黄金長方形)は、その短辺から作った正方形を取り除くと、残りの長方形がまた黄金比になるという性質があります。
正方形の1辺と同じ半径で弧を描き、残りの長方形の中にある正方形の中で同じように弧を描き……というのを繰り返していくと、オウム貝やカタツムリの貝殻のように弧がどんどん小さくなっていきます。
これを黄金螺旋(らせん)と呼んでいます。
②黄金比の例
身近な例では名刺、タバコの箱、トランプ、キャッシュカード、パスポートなどが挙げられます。
美術関係ではミロのヴィーナス、モナ・リザ、葛飾北斎の神奈川沖浪裏、建物ではパルテノン神殿、クフ王のピラミッドなどがあります。
ミロのヴィーナスは(頭頂~へそ):(へそ~爪先)が1:1.618になっています。
モナ・リザは顔の縦横比が黄金比になっています。
美術、建築だけでなく、生命の螺旋構造も黄金比になっているものがあり、人間が見て美しい、安定していると感じる比率です。
2.黄金比の使い方
①モチーフを黄金比にする
主役となるモチーフの縦横比が黄金比になるようにする。
例えば、パルテノン神殿やクフ王のピラミッドは縦横の比率が黄金比になっているので、そのまま模写すれば、それなりに美しく、安定して見えます。
でも、そんな黄金比の建物やモチーフを探して描くのは大変ですよね。
そんなときは組み合わせで黄金比にすればいいんです。
例えば、静物。リンゴなどの果物やパンやバスケットなど複数のものを組み合わせて縦横比が1:1.618になるように並べるという方法があります。
人物画の場合、座ってもらって、椅子などを含めて縦横比を黄金比にすれば、美しさと安定感が出てきます。
②黄金螺旋の終点
黄金螺旋(らせん)の終点にもっとも注目して欲しいものを配置し、視線を誘導する
フィメールの「真珠の首飾りの少女」は左目に、
ダビンチの「モナ・リザ」は口元に黄金螺旋の終点が重なるように位置されています。
画面全体の縦横比から導かれる螺旋の終点もあれば、上記2つの例みたいに人物の中だけで完結する螺旋の終点もあります。
③黄金螺旋の曲線
黄金螺旋の曲線に沿ってモチーフを配置する
葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」の波の形が黄金螺旋の曲線になっていると言われています。黄金比率は台風の形にも当てはまると言われており、自然の中でも合理的で存在しやすい比率なのかもしれませんね。
④黄金分割構図
例えば、長方形を横長に置いたとして、対角線を左上から右下に引きます。
次に左下の頂点から対角線に向かって直角に交わるように垂線を引いた交点があります。
同じように右上の頂点から対角線に向かって垂線を引いた交点があります。これで交点が2つできました。
対角線と交点を使うこの構図は斜線対角線構図ともいいます。
対角線は左下から右上に向かっても引けるので、同じように対角線と接していない頂点から垂線を引いて交点を2つ作ります。
これで合計4つの交点になりました。
この4つの交点のどれかに主役のモチーフが来るように配置するのが黄金比構図です。
三分割構図と似ているのですが、対角線を意識させるような線が背景にあるときは、こちらの黄金比構図を使うと効果的です。
⑤紙やキャンバスを黄金比にする
紙やキャンバスを黄金比のサイズ、縦横比にする方法です。
ちょっと裏ワザ的ですが、画面が黄金比になっているんですから最強……のはず。
キャンバスのサイズはFやMが黄金比の縦横比になっていると一般的には言われていますが、そうとも限らないので買う前に確認したほうがいいでしょう。
紙であれば、縦横比を測ってマスキングして描けば、簡単に黄金比の画面を得られます。
補足
黄金比を絶対的なものとして捉える必要はなく、作品によっては縦横比や配置を変えたほうが自然な仕上がりになる場合があるので、自分好みのしっくりする比率を試行錯誤して見つけてください。
(以上です)