水張りとは、水で濡らして膨張させた紙を木製パネルなどにホッチキスなどで留めて、支持体(絵の具を塗る面)とすることです。
乾くとピンと張るので描きやすくなります。
水張りせずに描くと、紙が膨張して波打ちする(よれる)ため、乾くとそのまま癖がついて描きにくくなるし、見た目も悪くなります。
膨張した紙を留める道具は主にホッチキスと水張りテープの2種類。
後者は接着力が強くて、やり直しがきかないため初心者はホッチキスのほうが無難です。
この記事で説明する項目の一覧です。
1.水張りにオススメの紙 |
それでは個別に解説していきます。
1.水張りにオススメの紙
①紙の種類
コスパで考えるとケント紙かワトソン紙の二択で十分です。
安くあげるならケント紙、ニジミやボカシの技法を使いたいならワトソン紙がオススメです。
予算があるならヨーロッパ製の高級水彩紙もいいですが、結構いい値段します。
②紙の重さ(厚さ)
水張りは水で膨張させて、引っ張りながら固定するので、あまりに薄い紙だと破れてしまいます。
紙の厚さは1平方m当たりの重さで表示されています。
最低でも120g、できれば150gの紙にしましょう。
300gくらいになると紙がかなりしっかりしてくるので水張りは不要になる場合が多いようです。
③イラストボード
そもそも水張りをしたくない、面倒と思う人にはイラストボードがオススメです。
板に貼り付けてあるので、水を使う絵の具で描いても波打ちしません。
でも当然ですが、板と貼り付けるコストがプラスされているので、紙だけを買うより高くなります。
2.水張りテープとホッチキス、オススメは?
一長一短があります。
①ホッチキス
初心者の方にはホッチキスをオススメします。
失敗しても何度でもやり直しができるからです。
ホッチキスの針が深く刺さってくれないときは、すぐ隣にまた打てばいいだけです。
ただし親指でギューッと押さないといけないので女性や非力な方には慣れるまで大変かもしれません。
②水張りテープ
非力な方にはオススメです。切手みたいに、水で濡らして糊を起動させる方式です。
かなり強固に接着する糊を使っているので、歪んでいると気づいてすぐならいいですが、しばらくしてからだとやり直しができません。
※筆者はしっかり引っ張りたいほうだったので、水張りテープよりホッチキスのほうが合ってました。
3.水張りの仕方
1)簡易版
A4サイズくらいまでの紙であれば、大きめのベニア板にマスキングテープで貼るという方法もあります。
(水張りテープではなく、マスキングテープです)
① 紙の表裏を見極める。
一般的に表側に光沢やツヤ、凹凸があります。
裏面に鉛筆などで印をつけておくと、濡らした後も混乱しにくいので便利です。
② 紙の両面を刷毛などでしっかり濡らします。
③ 5分間ほどで紙が伸び切ったら、表を上にしてマスキングテープで紙の端から5ミリほど内側に貼ります。
四辺とも貼って板に固定します。
④紙が乾燥したら使用可能です。
にじみやボカシなどをしたいときは乾燥する前に塗っても構いません。
2)木製パネルにホッチキスで留める
①用意するもの
・180度開くホッチキス
・木製パネル
・木製パネルより縦横とも6cm以上大きなケント紙や水彩紙。
この6cmの意味は、両端で3cmずつホッチキス留めするための余白であり、完成後は側面となる部分です。
②まず紙をしっかり濡らします。
5分間ほどして膨張しきったら、ホッチキスを180度開いて長辺の中央で留めます。
次に反対側の長辺の中央で少し引っ張りながら留めます。
そして短辺の中央で留めて、反対側で少し引っ張りながら留めます。
これで各辺の中央を4か所留めた状態になります。ダイヤモンド型に引っ張られたシワができているはずです。
③長辺の両隅を留めます。
反対側の長辺の両隅を少し引っ張りながら留めます。
④短辺の両端を留めます。
反対側の短編の両端を少し引っ張りながら留めます。これで先程のダイヤモンド型のシワはだいぶ目立たなくなっているはずです。
⑤追加で留めます
ホッチキスの間隔が空いているところは念の為、さらに追加して留めます。
描く部分に多少のシワが残っていても、乾燥すればピンと張るのでので気にしなくても大丈夫です。
3)水張りテープで留める
準備:木製パネルと紙のサイズを合わせるのが大事です。
木製パネルに対して紙が大き過ぎても小さ過ぎてもやりにくいです。
端で折り曲げて、側面の半分の所に紙の端が来るようにするのがベストです。
何を言ってるか分からないですよね(汗)
具体例を出します。
木製パネルのサイズが53x41cm、厚さが2cmだとします。
水張りテープの幅は2.5cmとします。
紙の長辺は水で伸びた状態で55cmになるのがベストです。
左端で1cmの余白を使い、右端で1cmの余白を使います。
1cmの余白は木製パネル側面の半分の所まで来ます。
これによって水張りテープは幅の1cmが紙の上に乗り、残りの1.5cmが木製パネルに乗ります。
側面だけを見ると、側面の厚さの半分を紙の余白部分がぐる~っと取り囲んでいるのが理想です。
これで伝わりますかね?
水張りテープの幅の半分が紙、もう半分が木製パネルに乗っていると、一番安定して接着力を発揮できます。
水張りテープの幅が木製パネルの厚さより大きい場合は、背面のほうに折り込んでください。
それでは、水張りテープを貼る作業の説明です。
① 紙をしっかり濡らす。
まず裏面を濡らし、ひっくり返して表面も濡らします。
5分間ほど待てば膨張します。
待っている間に水張りテープを用意します。長辺、短辺とも左右それぞれ2cmくらい余らすように長めに切る。
② 空気を中央から押し出す
濡らして絞ったタオルなどで、紙の中央から外へ放射状に空気をやさしく押し出すような感じで紙を伸ばして整えます。
このとき強く擦らないようにします。
端まで来たら、紙を折って型を付けます。
③折った先の紙の端に水張りテープを貼る
切手と同じで水で濡らすと糊が目を覚まします。
濡らしたタオルやスポンジの上に水張りテープを数回往復させて水を付けます。
④ 水張りテープを貼る
水張りテープの幅の半分は紙に、もう半分は木製パネルに乗るように貼る段取りです。
まず紙のほうに水張りテープを貼ります。
斜めになっていたらすぐに直す。
数分間以内に直さなかったら、くっついて離れないので、急いで直しましょう。
このとき、水張りテープが画面(描く面)に出っ張らないように、側面の中に収まるようにします。
⑤水張りテープを木製パネルに接着させる
紙をしっかり折って木製パネルの側面に押し付けて水張りテープも側面に押し付けて密着させます。
⑥水張りテープの端を隣の側面に回り込ませて貼る。
このとき、隣はまだ貼っていないので下に潜り込ませるようにして貼ることになります。
上に貼らないように。
⑦歪みがないかチェック
歪みが有れば速攻修正する。歪みが有ったとしても、水張りテープと紙のほうはもう接着していて剥がすと無残な感じになるので直さない。
主に紙が端で一直線に折れているか、木製パネルと水張りテープがきちんと接着して浮いていないかなどをチェック。
⑧反対側にも水張りテープを貼る
反対側を貼る場合は、すでに貼った端から全体的に空気を押し出すような感じで紙をやさしく伸ばし、端で紙を折る。
木製パネルの側面に水張りテープを押し付けて、密着させる。
⑨他の2辺も同じように貼る
上記②~⑧と同じように、空気を押し出すようにして紙を折り、水張りテープを側面に押し付けて接着させる。
⑩水張りテープの端を隣の側面に回り込ませて貼る。
紙の余白部分を側面に密着させてから水張りテープの端を留めるとキレイに貼れます。
⑪多少浮いていても大丈夫
画面が多少ブヨブヨしていても乾けばピンとなるので大丈夫です。
補足
慣れないうちは、なかなかホッチキスの針が食い込まなかったり、水張りテープが歪んだりで苦労するはずです。
慣れれば短時間でできるようになるので、練習を重ねてください。
(以上です)