※上の景色は画用紙やキャンバスに収まらないのでフレーミングする必要があります。
※奥行き重視なら左、水面に映ったリフレクションを強調するなら右が候補になります。
フレーミングとは枠決め、構図とはテーマを伝えるための演出のことです。
どちらも関連し合っているので切り離せるものではありませんが、分けて考えると、スッキリします。
フレーミングは絵画より写真撮影でよく使われる用語ですが、風景画の場合はこのフレーミングの概念を知っておいたほうが便利なので、解説してみます。
ところが、フレーミングと構図の境界はあいまいで、一般化した共通認識がないみたいなので、勝手ながら私見で解説していきます。
この記事で説明する項目の一覧です。
1.フレーミングとは枠決め。取捨選択 2.構図とはテーマの演出 |
それでは個別に解説していきます。
1.フレーミングとは枠決め。取捨選択
①水平線方向の取捨選択
例えば、美しい景色が180度のパノラマで広がっていたとします。
人間の目で見る分には広々として開放感もあるのですが、実際に絵にしようとすると、ほんのちょっとの角度しか描けません。
45度の角度でも、絵にしたらかなり広い角度に感じるはずです。
複数のキャンバスを繋いで連作にでもすれば別ですが、一枚に全部を描こうとしたら細くて横長の景色が小さくだらだらと繋がっているように見えるかもしれません。
その結果、何がメインなのか、何がテーマなのか分からなくなってしまいます。
こういうときは思い切って、メインのモチーフ以外を切り捨てる必要があります。
取捨選択をすることにより、主役であるモチーフを活かすことができます。
②縦方向や奥行き方向の取捨選択
例えば、菜の花畑やラベンダー畑が広がっていたとします。
何も考えずにスケッチすると、見たまんまの立った位置から見える景色を描くことになるでしょう。
そうするとどこまでも広がる広大な畑を漠然と捉えることになります。
誰でも見える平凡な視点からでは、単なるスナップ写真を絵にしただけということにもなりかねません。
それではどうすればいいかというと、単にキレイなものが延々と広がっている「以外」の捉え方はないか考えることです。
例えば、以下があります。
・しゃがんで低い視点から見上げてみる
・空の面積を大きく取ったり小さくしたりして調整する
・菜の花やラベンダーに貼り付くように近づいて、花の間から遠くを透かして見る
……などが考えられます。
③視線の角度、仰俯角の選択
人物画の場合、モデルとなる人は椅子に座って、左肩をやや前に出した左向きの格好を描くことが多いようです。
描く人は右利きが多いので、顔の曲線が描きやすいからですね。
でも別に水平方向からしか見ちゃいけないという決まりはありません。
床に近い位置から見上げるアオリという視点もあるし、上から見下ろす俯瞰という視点もあります。
角度の名前としては仰俯角(ぎょうふかく)と言い、水平を基準として仰ぎ見る角度を仰角(ぎょうかく)、見下ろす角度を俯角(ふかく)と言います。
例えば、立っている王様を描くとき、見下ろす角度(俯角)よりアオリの角度(仰角)のほうが威厳を示しのに適しているというのは容易に想像がつくはずです。
フレーミングは3D(横方向、縦方向、奥行き)の取捨選択、寄るか引くか、そして見る角度などの選択があるのです。
2.構図とはテーマの演出
構図とはテーマを伝えやすくするための手段です。
テーマのない絵はどこか曖昧で構図もちぐはぐな感じがします。
明確に伝えたいものがあるから構図が決まるのであって、なければとりあえず日の丸構図にしておけば主役であるモチーフは描けるでしょう。
それじゃあツマラナイよと思うのであれば、嫌でも構図を考えるようになります。
主だった構図は三角構図、三分割構図、対角線構図などがあります。
人物画の場合、モデルさんが横向きのとき、視線の先に空間を開けるという基本があります。
例えば向かって左を向いているとき、人物を中央から右に寄せて配置すると、左側に空間ができます。
これにより余韻が演出されます。
逆に左端に寄せてしまうと息苦しい感じがします。
フィメールの2作品をご覧ください
「窓辺で手紙を読む少女」
「天文学者」
いずれも向かって左に空間が空いています。
狭い部屋のようですが、絵画的な世界の中では空間が広がり、想像力を掻き立てられます。
補足1
巨匠たちのような画力はすぐには身につきませんが、構図は基本が分かってしまえば、一生使える便利なテクニックです。
構図に関しては別記事で詳しく解説しています。
構図が分かってくれば、フレーミングは連動して上手になります。
構図の知識があると、無茶な枠決め(取捨選択)はしなくなるからです。
基本的な構図を知っておくと、いい景色などを見つけたとき、迷わずにフレーミングできるようになります。
構図を知らずにフレーミングだけこだわっても、裏付けがないので画面構成の当たり外れが大きくなります。
補足2
フレーミングと構図は切っても切れない関係にあるので、言葉の定義や境界があいまいだったようです。
勝手に決めさせてもらえば、「フレーミングは枠ぎめ、構図は演出」と覚えておけば、そんなに外れていないはずです。
フレーミングのコツは捨てる勇気ですね。
あれもこれもと詰め込みたくなるのを堪えて、主役以外は捨てる潔さが必要になります。
ご自分でもいろいろ試行錯誤して、グッとくるフレームを探してみてください。
(以上です)