技法・画法

■ グリザイユ(カマイユ)画法・技法のやり方

2021年9月7日

グリザイユとはモノクロームで明暗を描くこと。
白黒、またはセピア(白と茶色)で描かれることが多いようです。
そのまま完成とすることもあれば、あとから有彩色を乗せていくこともあります。

アクリル絵の具は重ね塗りができるので、モノクロでいったん完成させて、その上から着色するという二段階方式が可能です。

グリザイユの語源はフランス語の灰色、カマイユは単色画。

グリザイユは白黒、カマイユは有彩色の濃淡と厳密に分ける場合もありますが、ひとくくりにしてグリザイユと呼ばれることも多いようです。

 

この記事で説明する項目の一覧です。

1.初心者こそ、まずはグリザイユ画法で
2.グリザイユは絵の設計図になる
3.実際の手順
4.模写の裏技

 

それでは個別に解説していきます。

1.初心者こそ、まずはグリザイユ画法で

グリザイユは初心者の習作にもオススメの画法です。
白と黒、または白と茶色の計2色の絵の具を使ってデッサンすると考えればイメージしやすいでしょう。

初心者の習作の場合、鉛筆デッサンからいきなり多くの筆と色を使うのはハードルが高くなります。
鉛筆を筆に変えるだけでも大変なのに、たくさんの色を使うとなるとやるべきこと、習得すべきことが一気に増えます。

色に関しては彩度と明度をきちんと理解して、描き分ける必要もあります。
例えば明暗の暗の部分(光源の反対側)にピンクや黄色などを塗る場合、適度に彩度を抑えないと浮き上がってしまうし、抑え過ぎるとベタッとした印象になり立体感が損なわれてしまいます。

ちなみに明度は色の明るさの度合いです。
白を混ぜれば明度は上がり、黒を混ぜれば明度は下がります。

彩度は色の鮮やかさの度合いです。
絵の具をチューブから出したままの純色は彩度が高く、混色してくすんだ色は彩度が低いということになります。
白黒灰色は無彩色と呼ばれ、彩度ゼロです。
白黒灰色以外は有彩色と呼ばれます。

話をグリザイユに戻します。この画法はモノクロームで描くことにより、色彩に惑わされず、明暗に集中することができるので、形や表面の微細な凹凸を描きやすくなります。

 

2.グリザイユは絵の設計図になる

線画で下書きをしただけでは掴みにくい全体の明暗と配分などを初期の段階で把握できます。

極端な例ですが、画面全体の明暗を計画せずに彩色を終え、主役も脇役も同じような明度となっている場合はテーマがぼやけてしまいます。
そのため、急遽、脇役の部分の明度を落とすとなると、細部まで彩色している場合は気が遠くなるような作業量になることもあります。

こういうことが起きないようにグリザイユの段階で、事前に全体的な明暗のバランスを考えておくとテーマを伝えやすく、まとまりのある絵になりやすいのです。

 

3.実際の手順

紙やキャンバスに、まず中間となる色(灰色または薄茶色)を全体的に塗っておくと明度の幅が限定されるので、より正確に陰影を捉えやすくなります。
明るい部分には白系を、暗い部分には黒系または茶色を足していけばいいのです。

白い紙やキャンバスにそのまま描くときは下地の白を活かすという方法もあります。
白色はハイライト部分以外あまり使わずに描いたほうが、よりスッキリと表現できます。

 

例えば西洋画などを模写する場合、初心者の方は3段階で描いたほうが結局は早く描き終えると思います。
①まず鉛筆でデッサンし、
②次にグリザイユ画法によってモノクロームで描き、
③そして薄く溶いた有彩色の絵の具※を重ねていく
……の3段階です。

いきなり複数の色を使って彩色した場合、全体的なバランスを整えるために何度も重ね塗りをして修正すると、絵肌が汚くなることもあります。
急がば回れです。

※グリザイユの上に有彩色を重ねることができるのは油絵の具やアクリル絵の具です。
水彩絵の具やポスターカラーでは下地の絵の具が溶けて濁ってしまうので向きません。

またアクリルガッシュはアクリル絵の具とは別物の不透明な絵の具であり、重ね塗りをすると下地を隠してしまうので向きません。

 

4.模写の裏技

とにかく手っ取り早くモチーフの明暗を掴みたいという場合は、スマホのカメラをモノクロームに設定して対象の絵を撮影するか、フォトショップなどの画像処理ソフトで白黒に加工することです。
スマホの無料の画像編集アプリでも、撮影後の画像を白黒にする機能はたいてい搭載されているはずです。

加工の際、コントラストを大きくすると、陰影がくっきりします。
ただしあくまで裏ワザであり、手抜きと言われても仕方ない方法ですので、いつまでも頼らないほうがいいと思います。
自分の目で陰影をつかむ練習もしましょう。

 

               (以上です)

 

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