画材・道具

■ジェッソの塗り方、使う理由、そして裏ワザ的な使い方

2021年11月4日

ジェッソ

ジェッソとは白い下地処理剤、地塗り剤です。
原料は炭酸カルシウムと顔料(チタニウムホワイト)、エマルジョン(アクリル絵の具に含まれるアクリル樹脂と同じ)を主成分とします。
下地剤として先に塗ると、アクリル絵の具の発色と定着を促します。

塗りたい面がデコボコで塗りにくいときや、布や木材など吸収が良すぎて発色が悪くなりそうなときに使います。

 

この記事で説明する項目の一覧です。

1.ジェッソを使う理由
2.ジェッソの使い方
3.ジェッソの種類
4.ジェッソを塗るときの注意
5.ジェッソの裏ワザ的な使い方
6.筆者の使い方、経験、感想など

 

それでは個別に解説していきます。

1.ジェッソを使う理由

アクリル絵の具は乾けば耐水性になるので、いろんなものに塗れるのが特長です。
でも表面がツルツルしたものに描くと剥がれる可能性があり、また吸収の良すぎるものに描くと発色が悪くなることがあります。
それを改良するためにジェッソを塗れば、定着や発色がよくなります。

ちなみにアクリル絵の具は単体だけでも、紙やキャンバスはもちろん、布、木、粘土、革など吸収性のいいものならほとんどのものに塗ることができます。

また石はツルツルしていなければ塗った後も定着できるはずです。
ガラスや金属などツルツルしたものはサンドペーパーをかけて表面にキズを付ければ定着しやすくなります。

アクリル絵の具の単体だけでも定着する素材に、わざわざジェッソ塗る意味ですが、主な理由に以下の2つがあります。

①表面を自分好みのなめらかさにするため
②発色を良くするため

それぞれ解説します。

 

①表面処理
ゴツゴツしたもの、凸凹したものに描くとき、筆をなめらかに動かせずに苦労することがあります。
とくに精密な絵を描こうとするときは表面が粗いと苦労します。
ジェッソを塗った後にサンドペーパーをかけると比較的スムーズな表面になり、繊細な筆運びもしやすくなります。

 

② 発色
例えば、木や板に直接アクリル絵の具で描くと、吸収が良すぎて思うような発色を得られないことがあります。
くすんだような、もっといえば残念な感じの色になります。
混色で彩度を上げるのは難しいので、イメージしたとおりの色を塗れず、ストレスが溜まるかもしれません。

そういうときにジェッソを使うと表面が白になるし、紙に描いたときと同じような発色をしてくれるので、普段どおりの使い方、塗り方ができるようになります。

 

2.ジェッソの使い方

(1)濃度
原液のままでもいいですが、伸びが気になる場合は水を少量混ぜて使うのもオススメします。
最大20%を目安に、あとは自分のお好みで調整してください。

 

(2)塗り方

板にジェッソ
(板にジェッソをざっと塗って、しっかり伸ばす前の状態)

一度でたっぷり塗らずに、薄く何度も塗るのがコツ。
筆よりペインティングナイフで伸ばしたほうが均一でムラなく塗りやすいでしょう。
「塗って、乾かして、サンドメーパーをかける」、これを1セットとして2~3回繰り返すとなめらかな表面になります。
写真みたいな精細な絵を描きたいなら、5~10回繰り返すのがオススメです。

乾燥時間は薄塗りなら30~60分で乾きますが、何回も重ね塗りするのにそんなに待ってられないという人は、ドライヤーで乾かしてください。
近づけ過ぎないようにして全体をまんべんなく乾かすのがコツ。
これなら数分間で乾くはずです。

 

3.ジェッソの種類

ジェッソ

1)粒子の大きさ
例えば、ホルベイン社のジェッソは含有する粒子の大きさでS、M、L、LLの4種類があります。
写真画質みたいな精細な絵を描くならS、とくにこだわりがないなら標準のMでいいでしょう。

 

2)カラージェッソ
ジェッソにアクリル絵の具を混ぜて使うこともできますが、乾くと質感にツヤが出てきて、テカテカして嫌だという場合があります。
そういうときは最初から色が混ぜてありつつ、ツヤ消しになっているカラージェッソを使うという手があります。

 

4.ジェッソを塗るときの注意

ジェッソ

ジェッソ 注意書き

①油絵の具用のキャンバス
表面が油で処理されているので、ジェッソを塗る前にサンドメーパーをかけます。
アクリル絵の具用のキャンバスも売られているので、こちらはそのままアクリル絵の具を塗ってもいいし、ジェッソを塗った後でもいいでしょう。
最近は油絵の具とアクリル絵の具の兼用というキャンバスも多くなっているようです。

キャンバスを買うときは、お店の人に確認して買ったほうが無難です。
品切れなら仕方ないですが、それ以外ならわざわざ油絵の具専用のキャナバスは買わないようにしましょう。

 

②吸収がよすぎる支持体
布やモルタルなど吸収がよすぎる素材を支持体(絵を描く面)にしたいとき、直接ジェッソを塗ると、その上に塗ったアクリル絵の具が剥がれる可能性があります。
そういう場合は下地の吸収性を抑えるためにグロスポリマーメディウムを塗って、その上からジェッソを塗ったほうがいいでしょう。
(板ぐらいなら直接ジェッソを塗っても大丈夫なようです)

塗る順番は、
吸収のよすぎる支持体 →グロスポリマーメディウム →ジェッソ →アクリル絵の具……です。

 

③ジェッソに絵の具を混ぜて使う場合
ジェッソにアクリル絵の具を混ぜて塗ることもできますが、乾くと徐々に質感にツヤが出てくるので、気に入らない場合は何度か重ね塗りしたほうがいいでしょう。

色を混ぜるのが面倒な人はカラージェッソというのも売っていますので、試してみてはいかがでしょうか。

 

5.ジェッソの裏ワザ的な使い方

白の代わりとして使えます(ちょっと薄いですけどね)。
冒頭で原料にチタニウムホワイトが入っていると書きましたが、極論を言ってしまえばアクリル絵の具のチタニウムホワイトとの違いは炭酸カルシウムの有無なので、不透明の白として代用できます。
ただし絵の具のチタニウムホワイトよりは顔料の割合が少ないので、隠蔽力は劣ります。
それでも、容量のわりに値段が安いので、ガンガン使えるという利点があります。

 

6.筆者の使い方、経験、感想など

どういうときにジェッソを使ったか、また使った感想などを書いてみます。

①キャンバスの布目を埋める
例えば髪の毛などの極細の線を描くとき、布目がゴツゴツしたままだと、面相筆で線を引いても点線になってしまったりします。
これを防ぐために予めジェッソを塗って、布目を目立たないようにします。
繊細な絵を描くときは、描く前にひと手間かけてジェッソを塗っておくと、その後の作業が楽になります。

これ実際にやってみると分かるんですが、ジェッソを塗るのを面倒くさがってそのまま描き始めた後に、キャンバスの布目が気になるレベルの細かい所を描きこむようになると、かなりイラっとします ^^;
仕方ないので面相筆を垂直に立てて、布目に絵の具が入るようにして塗ったこともありますが、効率が悪いことこの上ない。

別に細かい所のない絵や、平筆でザザッと塗る場合でも、布目の中に絵の具が入ってくれなくて何度も筆を往復させたり、筆を垂直に立てて、ねじ込むなんてこともあったりしました。

毎回ジェッソを塗る必要はないですが、微細な絵を描くときは塗っておいたほうがストレスを感じずに済みます。

 

②鉛筆の黒鉛と絵の具が濁るのを予防する
鉛筆で下書きしたあと、そのまま絵の具を乗せると、鉛筆の黒鉛と絵の具が混ざって汚い色になってしまうことがあります。
アクリル絵の具のときはドライヤーで乾かして、また絵の具を乗せれば、もう黒鉛が混ざることはほとんどありません。

でも油絵の具だとドライヤーでは乾かせないので、延々と濁ったまま作業しなくてはならなくなります。
そういうときにジェッソを塗っておけば、薄いカバーがかかった状態になって、下書きは消えずに残るし、混ざらずに済みます。

ただですね、ジェッソの上に油絵の具で描くと、食いつきが悪いんですよね。
食いつきというのは固着、接着という意味です。
なので完全に乾燥するまで表面を触るのは要注意です。
ズルっと地滑りを起こしたように油絵の具が取れてしまいます。

キャンバスの場合は3日くらいたてば布が吸ってる分、食いついてくれているんですが、ジェッソを塗った上に油絵の具だと完全に乾く1週間くらいは触らないようが無難です。

 

③板にじかに描くときの下地として使う
板に直接アクリル絵の具で描くと色が沈んでしまいます。板が水分を吸うためなのか、発色がイマイチになります。
いったん白などのアクリル絵の具でベタ塗りして厚めの被膜を作れば影響は少ないようですが、その後の作業もイマイチ発色が悪いような気がするので、板に塗るときジェッソは必須にしています。

以前、ボール紙というか厚紙にじかにアクリル絵の具を塗ったとき、ぜんぜん発色が悪くてジェッソを塗ったことがあります。
ボール紙の種類にも寄るんでしょうけど、やたら水分を取られて、ジェッソを塗っても塗っても効果がないような感じでした。
ボール紙が使えるなら、キャンバスボードよりぜんぜん安いし、水張りしなくていいので便利だなと思ったんですが、結果としてボツになりました。
ブロックタイプの水彩紙を買えば水張りはしなくていいので、ボール紙はもういいかなという感じです。

かといってボール紙や段ボールなどは画材としてダメと決めつける必要はありません。
例えば、段ボールに描きたい方もいるでしょうけど、そういう場合はあまり細かいことは気にせず、ジェッソも塗らずにガンガン、パワフルに塗ったほうがいいと思います。
段ボールにアクリル絵の具で描くとき、繊細な絵を描くケースはほぼないと思うので、スピードや勢いを大切にして思いっきり描いてみてください。
きっと楽しいですよ。

 

まとめ

この記事で説明した項目の一覧を再度載せます。

1.ジェッソを使う理由
2.ジェッソの使い方
3.ジェッソの種類
4.ジェッソを塗るときの注意
5.ジェッソの裏ワザ的な使い方

ジェッソは下地を調整してアクリル絵の具を塗りやすいしたり、発色をよくしたりするために使います。
使い方としては原液のままか、水を混ぜても20%までにして伸ばして行きます。
筆や刷毛よりペインティングナイフのほうがムラなく伸ばせます。
刷毛だとけっこう吸ってしまって、もったいないですし。
あと白が切れたとき、大量の白を必要とするときに代用品として使えます。

 

補足
アクリル絵の具で描くとき、いちいち水張りするのは面倒という場合は木製パネルに直接描くという選択肢もあります。
完成すれば額縁なしでそのまま飾れます。

木製パネルは高価と感じる場合、100均でB4サイズくらいの合板が売っているので、それを利用する方法もあります。

この際、板にそのまま描くと、くすんだような、沈んだような色になってしまうので、ジェッソで下地処理が必要になります。

昔の巨匠も油絵を板に描いていたので、別に突飛な方法ではありません。
ちなみにあの「モナ・リザ」はポプラの板に描かれています。

 

               (以上です)

 

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