絵で何を描いたらいいか分からない、テーマが何も思いつかないというときに役立つかもしれない発想法を紹介します。
今回は、矛盾語法です。
難しい言葉を使うと撞着語法(どうちゃくごほう)、対義結合です。
簡単に言ってしまえば、矛盾タイトル法です。
上手い絵、写真みたいに正確に描き写した絵に飽きたとき、または壁にぶち当たったときに役立ちます。
日本人は描く人も鑑賞者も真面目な人が多すぎです。
型にハマって小さくまとまっているような気がします。
最後に、変な絵で有名なルソーの作品を並べてみたので、頭を柔らかくするためにも、ぜひ最後まで読んでいってください。
この記事で説明する項目の一覧です。
1.矛盾語法の概要 |
それでは個別に解説していきます。
1.矛盾語法の概要
矛盾語法や撞着語法(どうちゃくごほう)とは、意味が矛盾する言葉を意図的に結びつける表現方法です。
論理的に矛盾したり、言葉のもつイメージと反対の言葉で修飾したりすることにより、興味、謎めき、意外性、深意、ユーモアなどの印象を与えることができます。
では、さっそく見ていきましょう。
2.矛盾語的な作品例
ある言葉を思いついたら、その一般的なイメージとは逆の形容詞を頭に付ける方法です。
これは興味を惹きやすく記憶に残りやすいので、映画や童話などでもよく使われています。
例を挙げます。
絵本:やさしいライオン
童話:臆病なライオン(オズの魔法使い)
映画:冷たい熱帯魚(漢字が矛盾的)
バック・トゥ・ザ・フューチャー
(未来はふつう先にあるものなのに、未来に戻る)
歌:サウンド・オブ・サイレンス
(直訳したら、静寂の音)
ドラマ、漫画:小さな巨人
お菓子:白いブラックサンダー
バンド名:Mr.Children
その他、格言など:急がば回れ、負けるが勝ち、無知の知、公然の秘密、生きた化石、ありがた迷惑、ワーキングホリデー……等
さらに、絵画の世界にもあります。
サルバドール・ダリ「記憶の固執」
固体の時計が液体のように柔らかくなっています
マウリッツ・コルネリス・エッシャー「滝」
現実世界では有り得ない水路と滝の組み合わせです。
著作権の関係で、本物の画像を用意できなかったので、エッシャー風のイラストです。
出所:pixabay.com
感じは掴めると思います。現実にはありえない構造ですよね。
次にマネの有名な絵です。
エドゥアール・マネ「草上の昼食」
矛盾とは言えないかもしれませんが、なぜ手前の女性だけ裸なのか腑に落ちません。不可解です。
2人の男性は裸の女性の存在に気づいていないようにも見えます。
ヒントは手を付けられずに転がっているバスケットの食べ物と、奥で水浴びをしている女性をセットで見ることにあるみたいですが、自分なりの解釈をしても面白いはずです。
3.矛盾語法のやり方
これまで前例を見てきましたが、ココからが本題であり、ご自身で考えて頂く課題の始まりでもあります。
例えば、お葬式といえば悲しむべきものというのが一般的なイメージですが、そこに「楽しい」とか「明るい」という形容詞を付けたら、どうでしょうか。
不謹慎と切り捨ててもらっても構いませんが、考えるだけですので自分の中だけ展開してみてはいかがでしょうか。
以下に思いついたキーワードと一般的なイメージ、反対の形容詞を列挙してみます。
・ ゴミ屋敷 →汚い →宝の山
・ 老い →悲しみ、頑固 →楽しみ、柔和
・ 若さ →無知、無鉄砲 →発想力、挑戦
・ 別れ →悲しみ →新たなる出会い
・ 孤独 →寂しさ →創造性の源
・ 雨 →陰鬱 →恵みの雨、読書の時間
・ 漂流 →不安 →未知の世界へ
・ 不合格 →落胆 →新たなる方向へ
・ 遺跡 →虚しさ →過去の栄華
・ 廃墟 →暗い、寂しい →明るい、爽快
・ 植物 →弱い、無口 →逞しい、雄弁
・ ナマケモノ →怠惰 →エコと平和主義
・ ライオン →王者 →狩り下手、怠け者
・ 深海 →闇、謎の生物 →楽園、新世界
・ 宇宙 →真空、虚無 →エネルギーの宝庫
筆者が思いつくままに列挙しただけで、違うイメージのある人もいるかと思いますので、そういう場合はご自身で改善、改良なさってください。
まとめ
矛盾語法は言葉の一般的なイメージの逆を出してみて、それから絵のテーマとして使えるか、ゆっくり考えるという方法です。
まずは不謹慎とか、ありえないと否定するのではなく、出すだけ出して、後で吟味すればいいのです。
このやり方はブレーンストーミングにも通じます。
アイデアを出すそばからダメ出しするようでは全然広がりません。まずは楽しみましょう。
補足1
一般的な認識の逆をいくような概念を提示したら、ひとまずは目に留まるはずです。
称賛されるか、バカにされるか、はたまたフウ~ンで終わるか分かりませんが、見る人に何らかの印象は残るでしょう。
少なくともありきたりとは思われないですよね。
こういう場合「コレ、変だよね」「変わってるね」と言われるのは最高の褒め言葉と思ってください。
絵の上手い下手ではなく、コンセプトが面白い絵は、つい見ちゃいますよね。
補足2
矛盾語法とは関係ありませんが、変な絵を描くことで有名なヘンリ・ルソーの絵を並べます。
あえて解説はしませんので、変な感覚を楽しんでください。 ^^;
アンリ・ルソー「Myself- Portrait – Landscape」
アンリ・ルソー「The Sleeping Gypsy」
アンリ・ルソー「La Seine À Suresnes」
アンリ・ルソー「The Banks of the Bièvre near Bicêtre」
(以上です)