技法・画法

■デッサンの塗り方、技法6選

2021年10月8日

デッサン、塗り方、技法

レオナルド・ダ・ヴィンチ「Sheet of Studies 」

 

鉛筆デッサンの塗り方は覚えておくと便利な技法がいくつか種類があります。
一つの技法「だけ」を使って完成までもっていくことは、そんなにないと思います。
そういう練習テーマにすれば可能ですが、実際は技法を組み合わせて使うことになると思います。
しかし、練習のうちは一つの技法「だけ」を使って集中的にやったほうが、習得するスピードは速くなります。
よかったら試してみてください。

 

この記事で説明するデッサンの技法、描法の一覧です。

1.点描
2.ハッチング
3.クロスハッチング
4.面塗り
5.擦る
6.削る

 

それでは個別に解説していきます。

1.点描

鉛筆デッサンで点描なんてあるの?と思われたかもしれませんが、あります。
根気は要りますが、点を密に打ったり、疎に打ったりして陰影の濃淡を表現します。

点描といえばジョルジュ・スーラの「ラ・グランデ・ジャッテ島の日曜日の午後」が有名ですよね。
こちらはカラーですが、一つ一つの点は原色を使っており、少し離れて見ると、色が混じり合い、グラデーションも表現できています。

今回は鉛筆デッサンの説明なので色は使いませんが、点の大きさと密度、鉛筆の芯の濃度は変えられますし、使い分けることで濃淡を表現できます。

鉛筆の先端は尖らせ過ぎないようにして、さらに画用紙の下にクッションとなるような物を敷けば、芯の先が欠けにくくなります。
根気のいる作業ですが、出来上がりは独特の風合いと緊張感が現れます。
打つ点を小さくし、数を多くすればするほど細密さが増し、迫力も出てきます。

 

2.ハッチング(一方向のみ)

平行線の連続で陰影を付けていく技法です。
ハッチングの傾き(方向)が全て同じになるのが特徴です。

この方法は、例えば顔を描く場合、全ての場所で右肩上がりの斜線を引くと決めたら、髪でも鼻でも顎の下でも、統一して全部同じ傾きの斜線を引きます。
レオナルド・ダ・ヴィンチは左利きだったらしく、右肩下がりのハッチングのデッサンが残っています。
右利きの場合は右肩上がりのほうが引きやすいはずです。

最初はなかなか直線が引けず、弧を描いてしまうかもしれませんが、慣れれば長い直線と平行線も引けるようになります。
なお、陰の濃いところは何本も平行線を引いて、密度を高くします。

 

3.クロスハッチング

同じ方向の平行線だけでなく、クロス(交差)する平行線も引いて、陰影を付ける方法です。
前述のハッチングはどこであろうと一度決めた角度で斜線を引かなくてはならない縛りがありましたが、こちらは自由ですので、顔の部位によって斜線の角度を変えることで、曲面が表現しやすくなります。

さらにX印になるように平行線を引くだけに留まらず、陰影の濃いところは色んな角度を重ねて、さらに濃くすることもできます。

 

4.面塗り

デッサン、塗り方、面取り

石膏デッサンに面取りというものがあります。
彫刻を単純化するために曲面を大胆に削り落とし、面の集合体としたものです。
有名な石膏像としてアグリッパやビーナスがあります。
初心者のうちは一つの面は基本的に同じ濃さで塗っていいでしょう。

石膏像に限らず、大抵のものは白黒にしたら明中暗の3ブロックに別けられます。
それぞれのブロックの中もさらに明中暗に別けられます。
これを応用した塗り方が面塗りです。

いきなり細かい所に陰影を付けるのではなく、まず大きな3ブロックに分けて薄っすらと塗るのです。
その後、それぞれのブロックの中で明暗を描き分けて曲面にすれば、全体としての整合性が保たれます。

上記の面取りビーナスの例でいうと、次のようにブロック分けできます。
①一番暗いブロック
右耳、右頬、首の右側

②中間のブロック
右側の額(おでこ)、右目の下

③一番明るいブロック
頭頂部、額中央部、鼻、下唇と顎

輪郭線を薄っすら描いて、目鼻口などのパーツのだいたいの位置取りをしたら、大きなブロック分けを早めにするのをオススメします。
けっこう描き込んだ後にやると、全体としての明暗バランスを調整するのが難しくなります。

頭部のデッサンの場合、輪郭線を引いて、目と鼻と口を描いて、陰影を付けたら終わり……ではなく、先に全体の設計図となるようなブロック分けをして、面取りデッサンみたいに、「面で捉えて塗っていく」というのがこの技法のポイントになります。

また、一度に目指す濃さに塗るのではなく、全体とのバランスを見ながら、少しずつ塗り重ねていくのも大切です。
そのためには鉛筆を長く削っておく必要があります。

デッサン、鉛筆、寝かせる、削り方
※画像をタップ(クリック)すると解説記事へ飛びます。

 

5.擦る

平塗りしたところを指やティッシュで擦ると、画用紙の凸凹の中に鉛筆の芯の粒子が入り込み、速く塗りつぶすことができます。

反面、ベタッとした印象になるので、影となる所や雰囲気の違うグラデーションにしたい所、ボカシたい所など場所を絞って使えばメリハリが出てきます。

 

6.削る

①輪郭線という線は実際には存在しないので、平塗りをした後で輪郭をなぞるように消しゴムで削ると、自然な境界線ができます。
必要に応じて輪郭の辺りに陰を足せばいいのです。

②多めに塗っておいて、消しゴムで消しながら形を整えるという方法です。
境界線を引いて、その中を塗るという方法だと、後で境界線が濃く残って邪魔になるときがあります。

例えば、眉毛を描くときに眉毛の輪郭を描いてその中を塗っていく方法だと毛並みを意識すると時間が大量にかかりますが、先に適度にさっさと大きめに塗ってしまって、後で「消しながら眉の形を整える」とより速く、より自然な塗り方ができます。
逆転の発想の塗り方と言えるかもしれません。

 

まとめ

この記事では、以下の技法、描法を解説しました。
1.点描
2.ハッチング
3.クロスハッチング
4.面塗り
5.擦る
6.削る

上級者の方は質感などに応じて、さらに多くの種類の塗り方や描き方を使い分けています。
初心者の方は上記7つを押さえておけば十分ではないでしょうか。

塗るときに大事なのは周囲や全体のバランスを見ながら、少しずつ濃くしていくことです。
その際、鉛筆を立てて塗ると一気に黒くなってしまうので、鉛筆を寝かせて優しく塗るのがコツです。

 

補足
鉛筆を寝かせて塗るためには、鉛筆を長く削って、芯を多めに出す必要があります。
ここら辺は別記事で詳しく解説しているので、よかったらどうぞ。
→「鉛筆の削り方(デッサン用) 初心者むけコツと理由も解説

 

               (以上です)

 

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