画材・道具

■100均とメーカー品のアクリル絵の具の違い

2021年10月6日

アクリル絵の具、100均、違い

100円ショップの値段は当たり前ですが1色1本100円(税別)で統一されています。
容量はだいたい20~25mlのようです。

一方、名の通ったメーカーのアクリル絵の具は20mlチューブ入りで1本200円~300円以上はします。
色によっては500円以上のものもあります。

1色だけならまだしも、基本色を一通り揃えるとなると、百均との差はそれなりに大きくなります。
例えばリキテックスだと12色セットで3,000~4000円でエントリーモデルが販売されています。

とりあえず初心者だしお試しで、という場合は百均でいいと思いますが、名の通ったメーカーとの性能の違いなどは押さえておいて損にはならないので、解説してみます。

 

ちなみに……
百均のアクリル絵の具を買う場合、D社、C社、S社などを比較したい人がいるかもしれませんが、どれも大差ないです。
どこのでもいいからササッと試してみて、アクリル絵の具と自分との相性が良さそうと感じたら早めに卒業して、メーカー品を買うことをオススメします。

いつまでも百均のアクリル絵の具を使ってると成長できなくなります。
逆にメーカー品のを使うと、百均ので苦労したことがアッサリ解決して、目からウロコなんてこともあります。

 

※「アクリル絵の具」と「アクリルガッシュ」は別物です。
今回はアクリル絵の具を解説しています。

 

この記事で説明する項目の一覧です。

1.原料が違う
2.耐久性、耐光性が違う
3.濃度が違う、伸びが違う
4.色が違う
5.不透明色の有無

 

それでは個々に解説していきます。

1.原料が違う

アクリル絵の具は百均もメーカー品も「顔料+アクリル樹脂」で作られています。
顔料は色の素のことです。

アクリル樹脂は正確にはアクリルエマルジョンと呼ばれるものですが、とくにこだわりが無ければアクリル樹脂で覚えておいて、差し支えありません。
顔料を紙やキャンバスに固着させるためのものがアクリル樹脂で、接着剤のような役割をします。

ココまでは百均もメーカー品も同じですが、大きく違うのは顔料です。
百均のものは簡単に言ってしまえばインク系のものです。
プリンターなどに使われるものをイメージしてください。
一方のメーカー品は「色の粉」です。
金属や土や鉱物など天然無機系のものもあれば、石油を原料とした合成有機系のものもあります。

ではどちらが高価かというと、もう想像つくと思いますが、メーカー品の「色の粉」です。
以下でも説明しますが、褪色しにくい(色あせしにくい)といった特徴があります。

 

2.耐久性、耐光性が違う

カラー印刷されたものを直射日光が当たる所に置いていたら、徐々に変色して色あせていきます。
色あせしたポスターは見たことがありますよね。
これと同じことが百均のアクリル絵の具でもおきます。
顔料がインク系なので。

一方のメーカー品のアクリル絵の具ですが、こちらも全く色あせしない訳ではないんですが、顔料そのものが持つ色を使っているので、耐光性が強い訳です。
理屈としては、例えば土系の色は本当に土を使っていたりします。
土はどれだけ直射日光を当てても、土色ですよね。
これが耐光性に優れている理由です。

あと長期保存したときのヒビ割れも、百均のほうは弱いと言われています。
百均のアクリル絵の具は練習用と割り切った人であれば、そんなに気にならない点ですが、描いた絵を飾ったり、人にプレゼントする可能性があるなら、メーカー品にしたほうがいいでしょう。

 

3.濃度が違う、伸びが違う

百均のアクリル絵の具はチューブから出したままでもサラサラして、液体に近い状態です。
ベチャッとした感じです。
水で溶くとすぐにトロトロに薄まります。

一方のメーカー品のものはネットリして、腰があります。
水で薄めるなら何度も混ぜて、しっかり均一化させる必要があります。

ではどちらが使いやすいかというと、水で溶く作業は大した労力ではないので気になりませんが、実際に塗ったときにその差が出ます。
百均のアクリル絵の具は薄いので、何度も重ね塗りをしないと、下の色が隠れてくれません。
重ね塗りのときは、塗って乾かすという作業を繰り返さないと、なかなか下の色が隠れてくれません。

アクリル絵の具はそもそも透明性と重ね塗りできるのがウリなので、メーカー品も下の色は一発では隠れてくれないのですが、それでもやはりスッと色が乗ってくれる感覚はストレスが少ないですね。

広い面積を平塗り(ベタ塗り)するときにも、その差が出ます。
色ムラを無くすためには、百均のアクリル絵の具を使う場合は根気よく何度も塗り重ねる必要があります。

 

4.色が違う

大きく別けて2種類の違いがあります。
①発色、色の鮮明さ
②色の種類

一つずつ説明します。

①発色、色の鮮明さ
百均のアクリル絵の具は意外と発色はいいんです。
どちらかというとケバい感じです。
ビビットで派手な画風にしたいときはいいかもしれません。

ただし青はややくすんだ感じ、ぼやっとした感じがします。
空に使うと薄っすらと雲がかかったような紫色に近い青色という感じがしました。
スカッとした夏の青空を描きたいときには物足りないかもしれません。
メーカー品のアクリル絵の具は全体的に自然な発色です。

 

②色の種類
百均のアクリル絵の具で青と言ったら、一種類しかありません。
メーカー品の場合は主だった青だけでも、ブリリアントブルー、フタロシアニンブルー、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルーヒューなどがあります。

微妙に紫がかっているとか、微妙に緑がかっているとか種類があります。
100均の絵の具に自分で赤や黄色をほんの少し入れて混色で似た色を作れないかと思う人もいるかもしれませんが、ほぼムリです。
青は三原色の一つで、混色では出せない色なので、混ぜればそれだけ彩度(鮮やかさ)が落ちます。

入道雲がもくもく湧き上がる夏のスカッとした青空を描きたいならメーカー品がオススメです。
赤も厳密にいえば、百均のものはやや黄色がかったオレンジ色っぽい感じですが、けっこう鮮やかな色なのでそんなに気にならない感じがしました。

 

5.不透明色の有無

百均のアクリル絵の具はほぼすべて透明です。
どの色も下の色が透けて見えます。
何度も重ね塗りをするうちに透けなくなってきます。
その中で、黒は割りと隠蔽力が高かったですね。

メーカー品のものは透明、半透明、不透明と種類があり、同じ白でもチタニウムホワイトは不透明、ジンクホワイトは透明となっています。
さっさと下の色を隠したいときや、失敗してしまった訂正のときなどに、不透明のチタニウムホワイトを使うという手があります。
また別の色にチタニウムホワイトを混ぜれば、隠蔽力が高くなり、塗りムラなどを抑えやすくなります。

 

まとめ

アクリル絵の具に関して、100均とメーカー品との違いは以下になります。
原料、値段、耐久性、濃度、発色、不透明色の有無。

いずれもメーカー品は値段がいいだけあって、いろんな面で優れています。
100均は練習用、入門用と割り切って、ある程度アクリル絵の具になれたら、早めにメーカー品にステップアップするのをオススします。

しかし、一概に100均はダメとか、決めつけるのではなく、併用して使うのもアリです。
例えば、野外スケッチに行くときは100均で、家でじっくり描き込むならメーカー品でという使い分けもできます。

値段を気にせず、ガンガン使って、ゴッホみたいにゴリゴリ盛り上げるというのも楽しいですしね。 ^^;

 

補足
百均とメーカー品との違いを解説してきましたが、初心者の方は始めのうちは小さな差にこだわらず、百均のアクリル絵の具でガンガン描いて欲しいと思います。
絵の具をケチらず、たっぷり出して厚塗りを重ねるなどの練習は百均のうちに経験しておきたいものです。

その後、なんでもっと上手に塗れないんだとか、狙った色を混色できないとか、色を似せられないとか、細い線の筆跡が汚いとか、いろんな不満や壁にぶつかったとき、メーカー品にしてみるとあら不思議、あんなに悩んでいたことがあっさり解決、なんてことが起きるかもしれません。
これは最初からメーカー品を使っていた人には分からない感動ですね ^^;

何事も経験と継続です。気楽に、楽しみながら描いてください。

 

               (以上です)

 

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