絵を描いていれば、いつかテーマやモチーフが何も思いつかないという場面に出くわすかもしれないですね。
そんなとき、何でも片っ端から描けばいい、というのは答えになりそうでならないでしょう。
そんな困っている人のヒントになりそうなネタを並べてみますが、その前に描けない理由も考えてみましょう。
この記事で説明する項目の一覧です。
1.描けない理由 2.練習用か本番用か |
それでは個別に解説していきます。
1.描けない理由
①理想が高すぎる
カッコイイ絵、人から褒められる絵しか描きたくないと思っている場合、それがプレッシャーになります。
SNSで公開することや人に見せることを前提としている場合、陥りがちです。
人に見せるのは自分の中で千本ノックをした後で十分です。
とりあえず100枚描きましょう。
描いているうちに自分の好きな描きたいものが見つかるはずです。
ポイントは「絶対に人に見せない」と誓ってから描き始めること。
②テーマが見つからない
テーマやコンセプトを後回しにしてはどうでしょうか。
頭でっかちになって、堂々巡りしているのかもしれないですよ。
高尚な(高級な)テーマを扱おうと意気込むと、自分で自分にプレッシャーを与えることになります。
そういうときは「考えるな、感じろ」です。
理屈で考えるのではなく、美しいと思ったものを片っ端から描きましょう。
そのうち、芋づる式に本当に描きたいものに出会うはずです。
③描きたいモチーフ(対象物)がない
家にあるものを全部描いてからそのセリフを言え、というのは恐らく答えにならないでしょう。
そういう場合は新しい何かを探すより、一つのものを集中的に観察して、その造形美を愛でてください。
愛でる(めでる)とは人や物を見て、味わい、慈しみ、美しさや機能美に感動することです。
例えば、シャープペンシルを企画設計した人はどこに注力したのか分析してみましょう。
決してテキトーにデザインしたのではないし、もしそうであれば貴方は買っていないはずです。
必ず機能美があるはずです。
消しゴムもそう。パッケージの紙の部分には必要な情報が過不足なく載っているのに、全体としてしっかりデザインされています。
ガラスコップも一つ一つデザインが違います。
なぜここにカットを入れたのか、なぜこの曲線なのかと考えたら、思いは尽きることがありません。
それでもまだ家にはモチーフがないと言い張るなら、散歩に出ましょう。
公園の木や花を一本一本つぶさに観察してはどうですか。
観察力が上がれば、描きたいものは幾らでも湧いてきます。
美しいと感じる心を磨きましょう。
2.練習用か本番用か
①練習用で描くのにオススメ1
素描にはクロッキー、スケッチ、デッサンなどがありますが、クロッキーをしてはいかがでしょうか。
クロッキーは3~10分程度で描き、速写とも言われます。
デッサンは数時間かけて質感まで正確に書き写すこと。
スケッチはその中間です。
何を描いていいのか分からないという初心者の人が、練習を目的としているなら、クロッキーから始めるのがオススメです。
自分の手を色んな角度から描くだけでも何十通りもあります。
何枚も何枚も描いているうちに、形を捉えるのが速くなっているのに気づくときがきます。
そうなれば、次は人の全身像にステップアップするといいでしょう。
手足の長さや頭の大きさ、全体的なバランスを正確に捉えられるようになると成長を実感できるはずです。
また毎日1枚と決めて、1ヵ月クロッキーをやるだけでも成長を実感できます。
それと平行して、デッサンもやるといいでしょう。
1日で集中して描き上げるのもいいし、毎日少しずつ描くのもいいですね。
2時間以内に家にある物を完成するまで描くというのがオススメ。
最初は細かい模様や凹凸のある物、透明な物は避けたほうが無難です。
時間がかかりすぎて集中力が続かないかもしれないので。
一見、単純な形の物でも描き始めるとすぐに複雑さに気づくことになり、今まで何を見ていたのかと自分にツッコミを入れたくなるかもしれません。
でもあなたの観察眼は確実に上がっているはずです。
②練習用で描くのにオススメ2
上手くなりたいけど、何を描けばいいのか分からないという場合、何を描いても練習になります。
何を描いても練習にならない訳がない。
それでも確実にステップアップしたいというなら、模写がオススメです。
ウィリアム・アドルフ・ブグロー「ガブリエル・コット」
※右側は白黒に加工したもの
まずは白黒、鉛筆デッサンで西洋絵画の有名どころを模写するといいでしょう。
ただしモナ・リザはオススメしません。自信をなくすので、後回しにすべき。
もっと簡単なところから模写しましょう。
(「ガブリエル・コット」が簡単という意味ではありません)
次のステップで絵の具の白と茶色(または白黒)を使って、筆で模写しましょう。
筆を使いこなす練習にもなるし、グラデーションの描き方はかなり鍛えられます。
※白黒または白茶色で描くグリザイユ技法の記事はコチラ
→「グリザイユ(カマイユ)画法・技法のやり方」
さらに次は、色を使ったフルカラーの模写。
これまでの形と陰影を捉える練習から飛躍的にハードルが上がります。
時間をかけて、じっくり取り組んでください。
③本番用で描くのにオススメ
何をもって本番とするのか人それぞれでしょうが、公募展に出展するような中上級者むけでなく、ココでは初心者向けに描くテーマを列挙してみます。
- 人に見せる、ウケる、褒められるというのは期待せず、とにかく自分の好きなものを描く
- ペットが好きならペットを、競馬が好きなら馬を、料理や食べ物が好きなら料理を、お酒が好きなら酒瓶を、スポーツが好きならその一場面を……というふうに今まで美術館や教科書で見たことのないようなもの、もしくは庶民的すぎるものをモチーフに描く
- 好きな小説や昔話の挿絵を勝手に描く
- 流行りの言葉や歌からイメージを起こして描く
- 散歩に出て、美しい、面白いと思ったものすべてを写真に撮る。
帰宅して、その中から一枚選んで強制的に描く。
描かないという選択肢はない。
どうしても描きたいものがないなら、もう一度散歩に出る。
美しいものを見つける練習であり、美しいと感じる感受性を上げる練習にもなります。 - 既にある絵画のアングルを変えて描く
- 既にある絵画の主役を別のものに入れ替えて描く
- 美術館に行く。
先人の努力と苦労の跡を肌で感じれば、インスピレーションが湧きます。
補足
基本的には困ったら、「書を捨てよ、町に出よう」です。
パソコンやスマホを家に置いて、メモ帳、小さなスケッチブックを持って散歩に出ましょう。
そして3~10分間でクロッキー(速写)しまくる。
家に帰って彩色するのも面白いですね。
風景の実際と異なる物を勝手に足したり引いたりしても誰も怒りません。
自分だけの世界は誰にも文句を言わせない。その意気込みと覚悟があれば、描きたいものは無限に湧いてきます。
(以上です)