遠近法とは二次元の画面(紙やキャンバス)に三次元の物体や空間を違和感なく描くための方法で幾つか種類があります。
線遠近法とはその中でも平行線の収束を利用したものです。
遠近法は奥行きのある風景画だけで利用するものではありません。
人物画でも線遠近法を無視した描き方をすると違和感が生じます。
理屈を押さえてしまえば一生使えるので、この際、覚えてしまいましょう。
この記事で説明する項目の一覧です。
1.線遠近法の概要 |
それでは個別に解説していきます。
1.線遠近法の概要
①線遠近法の使いみち
線遠近法は、人間の目は遠くのものほど小さく見えて、線路や道路などの平行線は水平線(目の高さ)の一点に収束するように見えるという知覚のクセを利用して、遠近を表現する方法です。
遠くのものほど小さく見えるのですが、同じ身長の人物を奥に向かってずらっと並べた場合、どのくらいの割合で身長を小さくしていけばいいのか分からないとき、線遠近法が目安となってくれます。
②水平線(目の高さ)について
線遠近法の肝となるのが水平線です。
これは目の高さと一致します。
小学生くらいの子供が居たとして、見下ろせば水平線は子供の上にありますし、しゃがんで見上げれば水平線は子供の胴体の辺りにあります。
地面に這いつくばるようにして見上げれば、水平線は足首やふくらはぎの辺りにあるでしょう。
大切なのは、どの高さからモチーフを見るのかと最初に意識して決めることです。
目の高さが決まれば水平線が決まります。
水平線が決まれば、線遠近法のルールに従って、色んな線の方向が決まります。
③線遠近法を無視すると起こる違和感
水平線より上にあるものは見上げることになりますし、水平線より下にあるものは見下ろすことになります。
例えば、人を見下ろしているのに鼻の穴が見えるのは不自然ですよね。
見上げているのに頭頂部の面積が大きいのも不自然です。
家で例えます。
屋根の出っ張った部分を軒(のき)といい、軒の裏側を軒天(のきてん)といいます。
地面に立っていれば屋根ではなく軒天が見えるはずです。
手前の家は軒天が見えているのに、遠くの家では軒天が見えない、または屋根が見えているとなると、鑑賞者は奥の家がコチラ側に傾いているように見えます。
理屈が分かってしまえば、このようなミスは減らせます。
2.消失点
上記の画像はタイルを敷き詰めたものですが、壁や天井、床の線を延長すると全て一点に収束しています。
この集まっている点を消失点と呼び、目の高さ(水平線)は黄色い線の辺りだと分かります。
線路や道路などの並行して走る2本の直線は水平線上で交わります。
この交点も消失点と呼びます。
道路のすぐ脇に並んでいるビルの上辺と底辺も同じ消失点に収束します。
道路の方向と向きが違うビルの場合、その上辺と底辺は消失点が道路と同じにはなりませんが、水平線上に消失点が来るのは同じです。
3.線遠近法の種類
①一点透視図法
上記の線路や道路などのように並行して走る直線が水平線上の一点に収束するもの、消失点が一つのものを一点透視図法と呼びます。
※上記の線路やタイルの写真みたいに平行線が一点に集まる構図です。
有名な絵画では以下があります。
レオナルド・ダ・ヴィンチ 「最後の晩餐」
②二点透視図法
ビルなどの建物を角から見上げた場合、窓の上辺と下辺は平行になっており、その延長線は水平線の点に収束します。
角から左側であれば1階の窓も上階の窓も、平行線の延長線は全部左側の水平線上の同じ点に集まります。
角から右側であれば全ての窓の平行線の延長線が右側の同じ点に集まります。
収束する点(消失点)が左右で2つです。
見下ろした場合の例を挙げます。
地面に長方形の土地があったとして、角からそれを見下ろすと、平行四辺形に近い形に見えますが、実際は手前側の2辺より奥側の2辺がかすかに短くなっています。
一見して並行に見える対となる線を延長していくと水平線で交わります。
平行線が2対あるので、もう一方の対も延長していくと、これも水平線で交わります。
交わる点=消失点が2つあるので二点透視図法と呼びます。
③三点透視図法
1)ビルを見上げる場合
交差点の角のすぐ近くにビルが建っていて、それを交差点の中心付近から見上げた場合、ビルの両端から最上階へ伸びる縦線は平行ではなく、上に行くほど狭くなっています。
その延長線が交わるところが消失点になり、二点透視図法の2つに加え、3つ目の消失点があるので三点透視図法と呼びます。
またビルが立ち並ぶ場合、隣のビルの空中の消失点も交差点近くのビルの消失点と同じになります。
空中の消失点を地面に近づけ過ぎると、台形もしくはピラミッドみたいなビルに見えて不自然になるので、消失点は地面から十分に離す必要があります。
高層ビルの場合、空中の消失点はずっと上にあるので、紙やキャンバスからはみだすこともありますが、何らかの方法で位置を固定して統一的に上に向かう線が必要です。
2)ビルを見下ろす場合
空中からビルを見下ろす場合、第3の消失点は地中になります。
その際、水平線はビルの屋上より上にきているはずです。
水平線は目の高さと同じなので構図を考える場合、ココを水平線にすると自分の意思で決められますが、第3の消失点は不自然にならないように配慮しなければならず、試行錯誤しながら決める必要があります。
まとめ
初めての方には難しかったかもしれませんが、平行線は観察者の目の高さに収束する(集まる)ということだけでも、とりあえず覚えておいてください。
これを押さえておくだけでも、風景などの歪みがずいぶん減ります。
補足
よかったら以下の記事も見てみてください。
似たような言葉が出てきて混乱している人には役立つかもです。
↓ ↓
絵画における「透視図法、線遠近法、パース」を整理してみた
(以上です)