絵のお悩み解決

■絵の奥行きの出し方、人物の描き方編

2021年11月7日

ゴッホ「医師ガシェの肖像」
フィンセント・ファン・ゴッホ「医師ガシェの肖像」

 

人を描くときの「奥行き」は主に立体感と内面という2つの解釈があります。
詳しく解説する前に、簡単に説明すると以下になります。

1.人物の立体感という意味
パッと見で、奥行きが感じられないというのは、立体感が出せていないというのとほぼ同じ意味でしょう。
立体感が出せていない原因は主に3つあります。

2.テーマ性
哲学的な意味での奥行きというと混乱するので、内面での奥行きといったほうが、ぐっと考えやすくなります。
モデルになってくれた人の外見だけではなく、性格、経歴、背景、他者との関係性などが作品に奥行きを与えます。

考えてみると深くなりそうなので、掘り下げてみましょう。

 

この記事で扱う奥行きの項目です

1.人物画の奥行きの出し方(立体感)
①側面を描いていない
②正面を向いている
③陰がない(明暗がない)

2.テーマ性としての奥行き(内面)
①内面の奥行きとは
②内面の奥行きを表現するために

 

それでは、個別に解説していきます。

1.人物画の奥行きの出し方(立体感)

人を描いたとき、立体感が無いと幼児がクレヨンで描いたみたいな平べったい絵になってしまいます。
立体感が表せない原因を3つ挙げてみます。

①側面を描いていない
②正面を向いている
③陰がない(明暗がない)

 

それぞれ解説します。

①側面を描いていない
立体文字は見たことはあると思います。
文字を浮き上がらせたみたいに陰や側面を付け足したものです。

これと同じように、先程の幼児のクレヨン画に側面を付け足したら、いやでも立体になります。
他には例えば四角の箱だけで構成するロボットを正面から描くと、ただの平べったい四角の集まりですが、斜めから見ると、立方体の集まりに変わります。
そうすると、いやでも立体的なロボットになります。

人間はロボットと違って丸みがあるので、角を取って曲面にしていきますが、側面は残すつもりでいれば、鑑賞者は人物の奥行きを感じてくれます。

 

②正面を向いている


フィンセント・ファン・ゴッホ「Head Of A Woman」

真正面から人物を描くのは難しいものです。
上級者でも苦労します。
鼻の高さを陰影だけで描かなくてはならないと想像したら、その難しさは容易に想像がつくはずです。

初心者のうちは、真正面から描くのは止めて、人物に少し左か右かを向いてもらいましょう。
そうすれば鼻の高さ、顎から喉への凹み、側頭部を描けるので奥行きが感じられます。

さらに両肩を同じ大きさで描くのではなく、少し半身になってもらい、奥にあるほうを小さく描けば、奥行きを表現できます。

 

③陰がない(明暗がない)
例えばカメラで、真正面を向いているモデルさんにフラッシュの光を浴びせて撮影したと想像してください。
強烈な光で陰影は飛び、微妙な高低差はすべて消え、ベタッとした白い顔になってしまいます。
このような状態で奥行きを描けと言われたら、上級者でも難しいでしょう。
というか創作意欲が湧かないはずです。 ^^;

人物画を描くとき、光源の方向は大事です。
描く人が光源を背にすると上記のような状態になってしまうので、左か右か、どちらか一方から光が来るようにすると陰影ができます。
この明暗が高低差や奥行きを表現してくれます。

 

2.テーマ性としての奥行き(内面)


フィンセント・ファン・ゴッホ「La Mousmé」

①内面の奥行きとは
人物、風景を問わず、モチーフを見てキレイだ、美しい、かわいいと思って、そのまま絵にしたら、テーマ性はそのまんまでしょう。
ある動物がかわいかったので絵にしましたという場合、それ以上の深さ、奥行きを感じろと鑑賞者に期待するのは無理があります。

その一方で、例えば人物画を描くとき、その人の人生と背景、挫折と苦労を知り、それでも逞しく生きていこうとする前向きな笑顔があれば、自ずと表情は何かを物語ってくれるはずです。

かわいい動物と、酸いも甘いも噛み分けた大人の笑顔と、どちらが優れたテーマかは好みもあるし、後者のほうは重いと感じる人もいるかもしれません。
自分に合うほうを選べばいいと思います。

もう一つ例をとると、フィメールの「真珠の首飾りの少女」と、ダ・ビンチの「モナ・リザ」。
どちらのほうが、よりテーマ性を感じますか?

「モナ・リザ」のほうが人生を重ねているので、酸いも甘いも噛み分けているように感じますが、「真珠の首飾りの少女」の眼差しは見るものを魅了して離しません。

この二人の巨匠は単に写実的に描くことだけを目的としたのではなく、言葉にならない言葉を絵で表現しようとしたのではないでしょうか。
モチーフの外見だけでなく、経歴や背景さらに内面も表現しようとすれば、おのずと作品に奥行きを与えるはずです。

 

②内面の奥行きを表現するために
少しでいいからインタビューしてみましょう。
簡単ではないです。
でも表現しようと努力することはできるはずです。

ご家族や友人、知人がモデルになってくれた場合、ちょっとの時間でいいので経歴についてインタビューしてみましょう。
恥ずかしがって簡単には話してくれないでしょうけど、意外と苦労人かもしれませんし、影で努力しているタイプだったり、わがままに見えて思慮深い人だったりするかもしれません。

親でさえ、聞かないと知らない経歴や経験があったりします。
物心が付く前の、ましてや両親が結婚する前のエピソードなどは毎日顔を合わせていても知らないことだらけのはずです。

親に限らず、ちょっとの時間のインタビューでその人の内面をすべて知ることなど不可能ですが、新たな一面を知れたら、それまでの顔つきも違って見えてきます。

さらに、その人に対するイメージをいったん整理しましょう。
これまでの思い込み、先入観を捨てて、真っ白な気持ちでモデルさんに向き合って観察してみましょう。

優しい人、怒りっぽい人、几帳面な人、真面目な人、苦労人、楽天家……などいろんなイメージがあったかもしれませんが、そんな一言で表されるような薄っぺらい人なんてこの世にいません。

明るく温厚そうな人でも悩みや憂いをたくさん抱えているかもしれません。
インタビューで聞けない部分、分からない部分は顔や目から滲み出ているはずだと信じて、じっくりと観察しましょう。

毎日顔を合わせている親や配偶者であっても、こんな目をしてたんだ、こんな目をすることもあるんだと新たな発見があるはずです。


ゴッホ「Gogh-Head Of A Woman」の一部

目を描くとき、最大限の緊張と集中力で瞳に映る光の点を打ってください。
写真では表現できない内面を映した作品になっているはずです。

 

               (以上です)

 

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