技法・画法

■空気遠近法と色彩遠近法 違い、例、使い方など

2021年9月18日

空気遠近法

空気遠近法とは空気中に含まれるチリや水蒸気などで遠くほど青みがかったり、白みがかったり、ぼやける自然現象を利用して遠近を表現する方法です。

色彩遠近法とは赤などの暖色系は目立ち手前に迫るような印象を与え、青などの寒色系は暗く奥へ引っ込むような印象を与えるので、これらの心理的作用を利用して遠近を表現する方法です。

 

※ちなみに線遠近法(透視図法)は別記事で解説していますので、よかったら見てみてください。

 

この記事で説明する項目の一覧です。

1.空気遠近法
2.色彩遠近法
3.粗密遠近法(オマケ)

 

それでは個別に解説していきます。

1.空気遠近法

厳密に分けると3種類あります。

① 遠くほど青い
レイリー散乱によるもので、光の波長よりも十分に小さいチリなどの粒子による光の散乱で起きます。
空が青いのと同じ原理で、観察者と対象の間の空気に青い光が多く散乱されるために遠くの山々などは青みがかります。
この原理を利用して遠くほど青みを強くして遠近を表現する方法です。

 

② 遠くほど白っぽい
ミー散乱によるもので、光の波長と同程度の大きさの粒子による光の散乱現象。
光の波長に左右されず、すべての波長の光が散乱するために白っぽくなります。
雲が白く見えるのは雲の水滴がミー散乱を起こすためです。
水蒸気の多い日本や東南アジアなどでは遠くの山々が白っぽくなります。
この原理を利用して遠くほど白もしくは灰色にして遠近を表現する方法です。

 

③遠くほど、ぼやける
空気中に含まれる水蒸気などが遠くの対象物に当たった光の反射を妨げ、直進させないようにするために起きる現象。
遠くの山々の稜線は湿度の高い日ほどハッキリしなくなり、台風一過の翌朝などは遠くまで明瞭に見えるのと同じです。
この原理を利用して遠くほど輪郭線をぼやけさせて遠近を表現する方法です。

※空気遠近法は単独で使うのではなく、3種を組み合わせて使うと、さらにリアリティのある表現になります。

 

2.色彩遠近法

色彩遠近法

色のもつ性格を利用して遠近を表現する方法です。
空気遠近法は何kmも先の遠くのものを表現するときにしか使えませんが、こちらはすぐ近くのものでも使えます。
色彩遠近法も厳密にいうと3種類あります。

①暖色系、寒色系によるもの
暖色系は目立ち、手前に出てくる印象を与え、進出色という言い方もします。
寒色系は暗く、落ち着いて奥まった印象を与え、後退色という言い方もします。

②明度や彩度の高低によるもの
また明度、彩度の高いものほど、低いものより手前に見えます。
ちなみに明度というのは明るさ、暗さの度合いで、明度は白が最高で、黒が最低になります。
彩度というのは色の鮮やかさの度合いです。絵の具のチューブから出したままの混じりけのない色は彩度が最高で、何らかの色を混ぜると彩度は落ちていきます。

③有彩色と無彩色の差によるもの
同じ明度であれば有彩色は無彩色(白黒灰色)より手前に見えます。
さらにいえば、蛍光色は手前に飛び出してくるような強さがありますが、デザイン系を除けば、描写系の絵画で使われることは稀かもしれません。

 

3.粗密遠近法(そみつえんきんほう)

描き込みが粗雑か細密かで遠近を表現する方法です。
遠くのものは粗く大ざっぱに描き、手前のものは細密に詳細に描く遠近法です。
同じような密度で全て詳しく描いてしまうと遠近感がおかしくなるので必須の遠近法でもあります。

例えば木を描くとき、近くの木は葉っぱの一枚一枚が見えるくらいに細かく描き込みますが、やや遠くの木を描くときは日向、日陰、中間の3色くらいで大雑把に描き、さらに遠くの木は1色で塗るような描き方です。

空気遠近法と似ていると思われるかもしれませんが、空気でぼやけるのは湿度にもよりますけど、かなり遠くです。
1km程度では青みがかったり、霧や霞(もや)がかかったようにはなりません。

ちょっと想像してもらったら分かるのですが、10m~500mの範囲内のものを同じ細密さ、精密さで描いたら、どうなると思います?
最初こそ「うわ~、凄いね、細かく描き込んだね~」と褒められるかもしれませんが、すぐに遠近感の違和感に気づくはずです。

遠くのものは粗いタッチでささっと描いたほうが楽だし、リアリティが出てきます。

 

補足
空気遠近法や粗密遠近法は風景画を想像で描くときに役立ちます。
スケッチして見たままの色を再現すれば、遠近感はそんなに変にはなりませんが、想像上のものなどを描くときはこうした遠近法を知っておくと全然違います。
色彩遠近法は近距離のもので使ったり、主役を目立たせたりするときに役立ちます。
これら3つの遠近法は単独でなく、組み合わせて使うとより効果的です。

 

               (以上です)

 

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