絵のアイデア・発想法

■描く前の企画・アイデア・構図 人物画編

2021年12月2日

ルノワール
ルノワール「Portrait Of A Boy In Blue」

 

例えば、ある美人さんやイケメンさんが運よく絵のモデルになることを約束してくれたら、喜びたくなるかもしれません。
でも全くのノープランで描く当日を迎えるのはオススメしません。
というか、むしろカッコ悪い。

そこはちゃんと下準備しましょうよ、というのが今回のテーマです。
技法・画法の話ではなく、プランニング・企画の話です。
絵筆をとる前の押さえておくべき項目を説明します。
ざっとこれくらいの計画は必要なんだとイメージを掴んでください。

 

この記事で説明する項目の一覧です。

1.一番簡単で無難な設定
2.ポーズ
3.フレーミングと構図、仰俯角
4.光と影

 

それでは個別に解説していきます。

1.一番簡単で無難な設定

人物画、左向き
左から「モナ・リザ」「真珠の首飾りの少女」「ガブリエル・コット」

簡単で無難な設定の例です。

① 室内で描く。モデルさんもアナタも人目を気にせず集中できますし、落ち着けます。

② アナタが右利きなら、モデルさんに左を向いて座ってもらいます。

③ バストアップといって頭の頂上から胸の辺りまでを描くようにフレーミング(枠決め)します。

④ 画面(紙やキャンバス)のど真ん中に描くより、やや右に寄せて配置します。モデルさんの視線の先に余白があると、鑑賞者にも気持ちの余裕が生まれます。
逆に左端に寄せてしまうと息詰まる感じ、窮屈な感じがします。

⑤ 主な光源はモデルさんの左側から射し込むようにする。
観察者(アナタ)の背後や前方から射し込むと順光・逆光になり、顔が平坦になり、表情が乏しくなるので難しくなります。

⑥ 太陽光より室内灯が無難。太陽は刻々と動きます。
一時間も経てば、表情さえ変わってみえます。

 

2.ポーズ

立つ、座る、寝る、または動きのあるポーズが考えられます。
考えられますが初中級者なら、まずは座った姿勢で十分ではないでしょうか。
モデルさんも楽ですし。

屋外で写真を撮って、後でそれを見ながらじっくり絵を描く場合は、立った姿も候補になるでしょう。
立って、どちらかの足先を手前に出すだけでプロのモデルさんっぽくなりますが、それだけではツマラナイという場合は、女性らしい柔らかさを感じさせる曲線を取り入れてはどうでしょうか。
手もしくは全身でS字を描くような大まかなラインがあると動きもでるし、柔らかさもでます。

 

3.フレーミングと構図、仰俯角

フレーミングは枠決めです。
見えている景色をどこで切り取るか決めることです。
構図はテーマを伝えやすくするための配置、演出です。
仰俯角(ぎょうふかく)とは下から見上げるのが仰角、上から見下ろすのが俯角です。
観察者の目線の高さを意識的に変えることで演出にもなります。

室内の壁を背景にするときも余白の大きさなどで留意することがあります。
立った姿を描くときはモデルさんの全身が入るようにして、一部が見切れないようにします。
見切るなら、その意図をハッキリさせておく必要があります。
右上、左上の余白もバランスよくなるように配置しましょう。

屋外で撮影して後で描く場合は、背景はあくまでモデルさんの引き立て役になるように構図を考えます。
無難なのは三分割構図ですが、無難すぎてツマラナイと感じようなら、なんらかの線がモデルさんの背後に集中するような背景を選びましょう。
例えば、岬に向かってなだらかに落ちていく山の尾根のラインと水平線、さらに手前から岬へ伸びる道路のライン、これらが交わる辺りにモデルさんに立ってもらうと視線誘導ができます。

 

4.光と影

エドゥアール・マネ「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」
モネ「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」

 

①光源の位置、光の射す方向
明暗がハッキリする方向がオススメです。
例1:モデルさんが左を向いて座っているとき、光源が左奥からだと手前の左頬が暗くなりますし、左手前からの光源だと右頬の辺りが暗くなります。
例2:モデルさんが正面を向いているときに光源が左からだと、右半分が暗くなります。

いずれにせよ鼻を境に明暗が分かれると描きやすくなります。
逆にモデルさんの正面から光が当たると、べたっとした感じになるので難しくなります。

ゴッホ、帽子をかぶった農夫の顔
ゴッホ「帽子をかぶった農夫の顔」

 

②太陽と室内灯
一時間以内に仕上げる絵ならいいでしょうけど、ちゃんと描き込むデッサンや絵の具を使って着色するなら室内光が無難です。
上記にも書きましたが、太陽は刻々と移動します。
光の角度によって色さえも変わってくるので、写真を撮って、後からゆっくり描けるなら構わないですが、その場である程度描くのなら、カーテンやブラインドを閉めるなりして、室内光だけにしたほうが無難です。

 

 

補足
一番大切なこと。最初に受けた印象を大切にしましょう。
慣れ親しんだ人がモデルさんなら、その人の過去も性格も分かっているでしょうから、できれば内面も表せるように努力してみましょう。
同じ美人さんでも、かわいい美しさと思いながら描くのと、クールビューティーと思いながら描くのとでは、まったく違った表情になります。
アナタの解釈が絵に表れるのです。

ご両親や兄弟をモデルに描くときも同じです。
出来上がった絵を見たモデルさんが「オマエは私のことを、こんなふうに思ってたのか」と怒られないとも限りませんが、それはそれで内面を表現できた素晴らしい画力といえます。
そうなった後はご無事を祈ります ^^;

 

               (以上です)

 

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