色を混ぜて中間色などを作るとき、たくさんの色を混ぜると、くすんだような色、濁ったような色になります。
混色は3色までという原則がありますが、なかには2色しか混ぜてないのに、イマイチで残念な色になってしまったという場合もあります。
この記事では混色で色が濁る原因と対策を解説してみます。
この記事で解説する項目の一覧です。
1.混色で濁る原因 2.混色で濁らないようにする対策 |
それでは個別に解説していきます。
1.混色で濁る原因
①色相環の反対側=補色を混ぜているから
色相環というのは12色または20色の色を円状に並べたものです。
12色の場合、時計に例えると12時の所に黄色があり、2時に緑、4時に青、6時に紫、8時に赤、10時にオレンジ色がだいたいの位置ですが配置されています。
一度は見たことがあるのではないでしょうか。
補色というのは輪の反対側にある色のことです。
黄色の補色は紫、緑の補色は赤、青の補色はオレンジ色です。
補色どうしを混ぜると、打ち消し合うので黒っぽい灰色になります。
これは光学的には反射する色が少なくなるからです。
黄色と紫の場合、黄色は紫の光を吸収し、紫は黄色い光を吸収するからです。
人間の網膜に色が感知されるのは、その波長の色が飛び込んでくるからです。
補色の混色によって吸収されてしまえば感知できなくなるので灰色または黒っぽくなる訳です。
②混ぜる色が多すぎから
混色は3色までが原則です。
これ以上混ぜると、色相環の補色のような反対側でなくても顔料どうしが打ち消し合う可能性が高くなります。
なるべくなら2色までのほうが色の鮮やかさも残るので、混色の際に再考してみてください。
③混ぜても作れない色があるから
三原色と言われる黄色、青、赤は混色では作れません。
厳密にいえば鮮やかな三原色は作れません。
黄色と青を混ぜれば緑になります。
黄色と青の中間色が緑だからです。
しかし緑と紫を混ぜたからといって鮮やかな青が作れるかというと、そんなことはありません。
なぜなら緑は黄色と青を混ぜられた色で、紫は赤と青を混ぜて作られた色なのです。
文章で書くと分かりにくいので数式みたいに書きます。
緑=黄色+青
紫=青+赤
緑+紫=(黄色+青)+(青+赤) (並べ替えると……)
=黄色+赤+青+青 (黄色と赤はオレンジになります)
=オレンジ+青+青
=[オレンジ+青]+青
色相環を思い出してください。
オレンジと青は補色の関係です。よって……
緑+紫=灰色+青
……になる訳です。
灰色と青を混ぜれば、濁った青になるのは当然です。
濁った青に白を混ぜても水色には近づきますが、鮮やかな青には決してなりません。
白を混ぜれば明度は増しますが、彩度は上がらないのです。
このような理屈から三原色といわれる黄色、青、赤の鮮やかな色は混色では作れないのです
④絵の具自体が単一顔料ではなかったから
アクリル絵の具は顔料+アクリル樹脂でできています。
この顔料は色によって単一である場合と、混合の場合があります。
混合というのは複数の顔料を混ぜて作られた色ということです。
チューブから出す前に既に混色していたということです。
メーカーによる長年の研究で混合顔料でも鮮やかさは高くなっています。
それでもチューブから出した後に混色すると、自分では2色しか混ぜていないのに、実際は3色以上、場合によっては4色以上も混ぜていたということも有りえます。
2.混色で濁らないようにする対策
①色相環の近い色を混ぜる
色相環の隣どうしの三色を類似色といいます。
類似色どうしを混ぜるのであれば、光学的に打ち消し合う度合いは減るので、濁りは少なくなります。
②混ぜる色数を減らす
これが一番です。
どうしてもその色でなければならないと思い込むのではなく、他の方法を考えてみましょう。
混色する前の色を2種類用意して、隣り合わせに置くことで遠目から見たら狙った色になるかもしれません。
③可能なら中間色を買う
混色で作った色は、売られている色に鮮やかさでは敵いません。
メーカーが長年の研究で編み出した色なので、当然といえば当然です。
予算が許すなら買ったほうが速いし、混色で悩む時間の無駄にもなりません。
④点描画の混色の原理を使う ←オススメ
ジョルジュ・スーラの「グランジェット島の日曜日の午後」をご覧ください。
こちらは原色しか使っていないと言われています。
それでも遠くから見ると中間色やグラデーションまで表現されています。
これはカラー印刷と同じ原理です。
フルカラー印刷の場合、全ての色のインクを配合して印刷している訳ではありません。
基本的には赤青黄色と黒の4色です。
それぞれの色の版を作り、細かい点(ドット)で色を乗せていきます。
例えば青いドットの密集しているところは青になりますが、少ないところは紙の白と混ざって水色になります。
黄色いドットと赤いドットを乗せるとオレンジ色に見えます。
これを応用するのです。
近くで見れば別々の色ですが、遠くで見ると混色されているように見えるのです。
西洋絵画の巨匠の絵は写真のようになめらかな色彩の変化があるように見えますが、近くで見ると大胆な筆さばきで色を置いていたりします。
補足1
濁るというのは彩度が落ちるということでもあります。
彩度は絵の具をチューブから出した状態がマックスで、何かを混ぜると彩度は落ちます。
白を混ぜれば明度は上がりますが、彩度は下がります。
混色すれば彩度は落ちるものと覚えておきましょう。
補足2
現代のプロの画家さんでも彩度が落ちるのを嫌って、敢えて混色しないという選択をしている人はたくさんいます。
チューブから出したまま紙やキャンバスに塗って、離れて見たら色が混ざって中間色に見える「視覚混合」「色彩混合」という現象を利用しているのです。
混色の濁りで悩んだら、この方法も試してみてください。
補足3
混色については基本編と応用編を別記事で書いています。
関心のある方はそちらもご参照ください。
↓ ↓ ↓
「混色 色の作り方の基本」
(以上です)