構図

■絵画における「透視図法、線遠近法、パース」を整理してみた

2021年12月1日

パース

 

透視図法、線遠近法、パースと似たような言葉が出てくるので、整理してみました。
結論から言うと、ざっくりまとめてしまえば、全部同じ意味です。
パースはパースペクティブの略なので、この2つは全く同じ意味です。

逆の視点から見てみましょう。
英語のパースペクティブの訳は、遠近法や、透視図法になるので、やはりこの3者はまったく同じと考えていいでしょう。

ちなみに透視図法は透視画法ともいい、共に線遠近法をよりどころとした空間表現方法です。

 

この記事で解説する項目の一覧です

1.透視図法(透視画法)の語源
2.3つの透視図法
3.透視図法を左右する位置と点
4.アオリとフカン(俯瞰)

 

では、それぞれ個別に解説してみましょう。

1.透視図法(透視画法)の語源

ガラスなどを「透視」してモチーフをガラス上に描き写す方法が元になったと考えられます。実際の手順は以下です。

あるモチーフの形を描き写すときの例

① 観察者の視点(目の位置)を固定する
② 観察者とモチーフの間にガラスを置く
③ ガラスを通してモチーフを見る
④ ガラス上にペンなどでモチーフの輪郭などを写し取る

※観察者の視点が上下左右に動かないようにするため、観察者側とガラス側に一致させるためのマーク(照準)が必要になります。

※両目では正確に見られないので片目で見ることになります。

 

2. 3つの透視図法

①一点透視図法

パース、一点透視図法
線遠近法、1点透視図法
平行した直線の延長線が水平線上の正面の一点に収束している透視図法。その一点を消失点と呼びます。

例えば立方体を正面のやや上から見たとき、上辺の延長線が水平線に収束するように奥側を狭めて描きます。

 

②二点透視図法

2点透視図法
パース、二点透視図法
消失点が水平線上に二点ある透視図法。

例えば、直方体のビルを正面から45度回転させて、角が手前に一番近くなるように置いたとき、屋上の延長線は左右どちらも水平線上に収束するように両端を狭めて描きます。

 

③三点透視図法
3点透視図法
消失点が水平線上に二点、空中または地中にもう一点、計三点ある透視図法。

例えばビルを見上げるとき、両脇の平行した垂直線は空中のある一点で収束します。
これが三点目です。

またヘリコプターなどでビルを見下ろしたとき、両脇の垂直線は地中のある一点で収束します。
これも三点目になります。

三点透視図法の場合、見上げるのか(アオリ)、見下ろすのか(俯瞰:ふかん)によって、三点目は空中か地中かが決まります。

 

3.透視図法を左右する位置と点

透視図法を描くとき、結果を左右する位置と点があるので、列挙します。

・ 立ち位置……観察者の立つ位置

・ 絵の面……透視するガラス面の位置

・ 目の位置……モチーフやガラス面から目までの距離

・ 目の高さ……観察者の目の高さ

・ 水平線……目の高さと一致する

・ 消失点……水平線上で収束する点。三点透視図法のときは空中、または地中で収束する点も加わる

※上記でとくに大切なのは目の高さです。
アイレベルともいいます。
目の高さと水平線は一致するので、地面に這いつくばるようにして見ると、水平線も一番下のほうになります。
高い位置からモチーフを見下ろすと、水平線も高くなります。

 

4.アオリとフカン(俯瞰)

アオリは見上げるとき、フカン(俯瞰)は見下ろすときの角度のことです。

例えば縦長のモチーフを描くとき、どの位置に観察者の目の高さを設定するかによって、モチーフのとくに気になるポイントを見る角度が変わってきます。
人であれば顔がとくに気になるポイントになります。

アオリとフカンを意図的に使う例を挙げます。
背の高い男性を描くとき、同じ目の高さで描くと背の高さが表現しにくくなります。
8頭身とか9頭身ほどある人ならいいですが、髪の多さなどで頭が大きく見える人なら長身と分かりにくいかもしれません。
それなら目の高さを下げて、アオリ(見上げる角度)で描けば自然と背の高さが表現できます。

また偉い人を描くときにもアオリの角度は活かせます。
例えば背の低い王様がいたとして見下ろすように描いては威厳を示せません。
目の高さを下げて、やや見上げるようにすると大物感がでます。

逆に小さな子どもやペットをアオリで描くと堂々とした雰囲気になり、かわいらしさや小ささは伝わりにくくなります。
ギャップの面白さを狙うならわざと使うという手もあります。

どの位置に目の高さをもってくれば一番しっくりするか、いろいろ試してみてください。

 

補足
風景画で家などが傾いたり歪んで見えるのはパースの理屈を知らないことによるものがほとんどのはずです。
この際、覚えてしまいましょう。
理屈が分かってしまえば、一生使えますよ。

 

               (以上です)

 

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