絵のアイデア・発想法

■ゲシュタルト理論 絵で何を描けばいいか分からないとき、6つのヒント

ゲシュタルト

人は複数の物を見るとき、個々の要素ではなく、全体の構造を見ようとするクセがあります。
簡単に言えばグループ化して、意味を見出そうとすることです。
視覚的情報を脳で処理するときの「足がかりとなるきっかけ」や「くせ」、「要因」があるからです。

これらを解明しようとした研究の一つにゲシュタルト理論があります。
難しい理論はさておき、どういう要因があるか知っておくことで絵を描くときのテーマや視覚誘導のヒントになるかもしれません。
ココでは6つの要因を紹介します。

 

ゲシュタルト理論、6つの要因の一覧

1.図と地
2.類似
3.近接
4.閉合
5.連続
6.対称性

 

それでは個別に解説しましょう。

1.図と地

ルビンの壺、ゲシュタルト理論

人は絵を見たとき、意味のある形とそれ以外に分けようとします。
前者を「図」、後者を「地」と呼びます。
大抵は主役のモチーフが図、背景が地となるでしょう。

ところが「ルビンの壺」と呼ばれる絵は、中央の壺が図になることもあれば、両脇から向き合っている2人が図になることもあります。
どちらか一方で解釈しているとき、他方は知覚されなくなります。
網膜には映っているのに、です。

両方の解釈を同時にするのは至難の業であり、それが面白さともなります。

 

2.類似

トーン,色調

人は形や大きさ、色、色調(トーン)、質感、明暗、方向性などの特徴が似通っているものを同じグループであると認識します。
よって、同列に並べたものの中に一つだけ向きや色を変えると、それは特別な存在になり、目立たせることができます。

 

3.近接

ゲシュタルト

人は色や形や大きさ、種類が違っても、距離の近いもの同士はグループとみなしやすい傾向があります。
グループの中身はバラバラの中身でも、他のグループがあることで対比されるとも言えます。

例えば、キャンディ、鉛筆、腕時計、コップ、乾電池とくれば、関係性は全くないので何のこっちゃとなります。
しかし、それぞれ複数個を用意して、3個の集まり、4個の集まり、5個の集まりを作って、それぞれの間に距離を開ければ、嫌でもグループが3つできたように見えます。
3つのグループにそれぞれキャンディが1個ずつ含まれていたとしても、先に認識するのはグループのほうです。

絵の場合は、色と形の違うものを近づけてグル―プ化し、別のグループと離すことで異質なもの同士が生み出す調和を表現するという方法が考えられます。

 

4.閉合

フェルメール
フェルメール「真珠の耳飾りの少女」

人は見慣れたものに欠けた部分があれば、それを埋めようとする脳の働きがあります。
欠けた部分を補うことで完全な形やパターンになるように脳が補正しようとするのです。
例えば円周の所々を消しても、全体としては円として認識するのと同じです。

絵の場合は、省略の美学として使えます。
例えば、鼻を描く場合、目の辺りの一番低い所で鼻先の方向性を描いて、次に鼻の下部を描いたら、鼻のラインは鑑賞者が勝手に想像してくれます。
これは実際に鼻の線を引いて、くどくど説明するみたいに描くより、鑑賞者の手に委ねるほうが、より豊かに立体的に表現できることに繋がります。

 

5.連続

ゲシュタルト理論

人は似たような要素が連続している場合、その輪郭または形が、その後も続いていくと認識します。
例えば、$のマーク。
これを「向きの違う半円が2つ、縦に並んでいる」と認識するのは直感的にはムリでしょう。
Sの字に縦線が入ったものと認識するはずです。
貫く直線を強く感じるのです。

絵の場合は、異なる要素の間に繋がりを表したり、連続性を示したり、視線誘導にも使えます。
何かが連続している先の主役(モチーフ)に、視線を誘導したいときなどです。

 

6.対称性

人は視覚情報を系統立てて、秩序のあるものとして認識したいという傾向があります。
対称性のあるものは、ペアによって安定し、完結することで調和がとれたと感じるのです。

例えば、( )や【 】はそれぞれ一つだけだと、もう一つを探したくなります。
気になって仕方ないし、落ち着かない状態になります。
このように本来、対称であるべきものが非対称であると、鑑賞者の注意が散漫になり、肝心のテーマが伝わらなくなります。

シンメトリー、リフレクション

絵の場合は、水面にモチーフが映ったリフレクション構図(上下対称)は面白さがあります。
道路や橋の両側に同じような景色のあるシンメトリー構図(左右対称)は安定感があります。

シンメトリーだけだと安定し過ぎてつまらなく感じてしまうときは、中央付近に歩いている人などを描けば、動きが出て面白さがプラスされます。

 

 

補足
上記とは逆に、ゲシュタルト崩壊というものもあります。
鑑賞者が全体としての認識や、グループ化、意味付けを諦めた状態です。
これでは興味を失わせてしまうことになり、テーマが伝わらなくなってしまいます。

似たものだけ、分かりやすいものだけを描いて、ゲシュタルト理論をまったく利用しないのであれば、崩壊の心配はありません。
ですが、それだけではツマラナイと感じるようでしたら、できるところから少しずつ挑戦してみてはいかがでしょうか。

 

               (以上です)

 

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