絵のお悩み解決

■奥行きの出し方のコツ、風景画の色と線、遠近法

2021年11月8日

風景画

ジョン・ウィリアム・カシリア「Landscape」

 

単に風景画での「奥行き」と言っても、3つの解釈が考えられます。

1.物の立体感という意味。
2.空間的な広がり、近景と遠景の描き分けという意味。
3.テーマ性。モチーフ(対象物)のもつ歴史、背景、物語性などの意味。

この記事では風景画を主に扱います。
人物画の奥行きは別記事で解説しています)

 

この記事で解説する項目です。

1.風景画の奥行きの出し方(遠近法)
①横一列に並べない
②重ねる(重畳遠近法)
③上下に配置する(上下遠近法)
④奥ほど小さくする(大小遠近法)
⑤奥ほどかすれて、ぼやける(空気遠近法)
⑥手前に飛び出す色を利用する(色彩遠近法)
⑦平行する線は水平線上の一点に収束する(線遠近法)

2.テーマ性としての奥行き

 

それでは個別に解説していきます。

1.風景画の奥行きの出し方(遠近法)

遠近法は別記事で詳しく解説しているので、ココでは奥行きを出すコツに特化して説明します。
(別記事→ 線遠近法(透視図法)、 空気遠近法と色彩遠近法

 

①横一列に並べない
例えばリンゴを3つ横に並べて描いても奥行きは感じません。
真上から見て三角形になるように配置したのを底辺側の水平方向から見たら、真ん中のリンゴは奥にあると認識されます。

3人を横一列に並べると構図的な面白さもないですが、斜めの一列とか、三角形に配置するとリズムみたいなものも生まれ、面白さと奥行きが感じられます。

 

②重ねる(重畳遠近法)
人と木が並んでいたとします。
重なりあう部分がまったくないと、鑑賞者はどちらが手前にあるのか、または並んでいるのか判断が付きません。

人の半身が木に隠れていると、木が手前と分かりますし、木の一部が人で隠れていると、人が手前にいると分かります。

 

③上下に配置する(上下遠近法)
同じ種類の車が並んでいるとします。
横に並べたら、どちらが手前か分かりにくいですが、上下に並べると、上にあるほうが奥と認識されます。

これは人間の経験上、上から見たら(俯瞰したら)、そう見えてきたので、上の物が奥と認識してくれるからです。

 

④奥ほど小さくする(大小遠近法)
当たり前なので、割愛します。
遠くの物ほど小さく見えるという意味です。

 

⑤奥ほどかすれて、ぼやける(空気遠近法)
色でコントロール その1

空気遠近法

遠くのものほど空気の層が厚くなるので、かすんだり、ぼやけたりします。
手前の山々は緑だったのが、奥に行くほど青みがかります。
青くなるのは青空と同じ原理で、空気中に青い光が屈折して拡散しているからです。

 

⑥手前に飛び出す色を利用する(色彩遠近法)
色でコントロール その2
赤と青を並べると、赤が手前にあるように感じます。
黄色と黒なら、黄色が手前に感じます。

画面(紙やキャンバス)の手前に飛び出して見える色を多く配置し、奥には沈んだ色を配置すると、遠近感を表現しやすくなります。

 

⑦平行する線は水平線上の一点に収束する(線遠近法)
線でコントロール

線遠近法

道路や線路などの平行線は水平線上の一点に収束します。
道路脇に建つビルの窓枠の上辺と下辺もすべて水平線上の同じ一点に収束します。

 

2.テーマ性としての奥行き

1)テーマ性
風景を見て、キレイだ、美しいと思って、そのまま絵にしたら、テーマ性はそのまんまでしょう。
『昔はいろいろあったけど、今は落ち着いてこの景色』というふうに、歴史を知っているのと、そうでないのとではテーマ性に違いが出てきます。

また歴史は知らなくても、美しい風景を見たときに、そのまんま絵にするのではなく、視線誘導や構図を考えることで、作者の企み(たくらみ)をテーマという形で伝えることができます。

視線誘導や構図の知識のある人が見れば「ほほ~、この画家はこういう企みなんだな」と察しが付きますし、そんな知識のない人が見れば、何となく心地よくて、画面の隅々まで見てくれることになるはずです。

企みというと聞こえが悪いなら、アイデアと言い換えてもいいでしょう。
そういう企みやアイデアのある絵と、ただ単に写実的に写した絵とでは、奥行きに違いが出るのは当然ではないでしょうか。

 

2)肩の力を抜く

風景画、奥行き

キレイな風景を見たら、それを再現するように描きたくなるのは当然ですよね。
でも近景しかない風景の場合、例えば近くの公園でキレイな花が咲いていたときなど、線遠近法や色彩遠近法を使えないときがあります。

そういうときは一歩引いて、モチーフだけを描くのではなく、「抜け」を探しましょう。
空でもいいし、周りの景色でもいいんです。

例えば、アジサイを見下ろして描こうとすると、アジサイの花と葉っぱ、それと地面しか描けなくなってしまいます。
花の美しさに感動したとしても、そこはグッとこらえて、肩の力を抜きましょう。

しゃがむなりして同じ目線の高さになって、画面の抜けを探しましょう。
アジサイを左右どちらかに寄せて、小さくてもいいから視線が遠くに抜けるルートを確保してあげるのです。
そうすることで鑑賞者は圧迫感を感じずに画面内を隅々まで見ることができます。

 

※お知らせ
風景画に特化したサイトを立ち上げました。初心者の方むけに分かりやすく解説しています。
→「風景画の描き方とコツなら『風景画ファン』

 

               (以上です)

 

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