絵のお悩み解決

■トーン(色調)構成とは

2021年11月5日

トーン構成とは、色調、ルノワール「母と子」
ルノワール「母と子」
(右側は白黒加工したもの)

 

トーン構成とは、画面全体のトーンをコントロールして適切に配分し、構成することです。
例えば、画面全体を全て高いトーンにするのではなく、高中低みたいにブロック分けする考え方です。

 

この記事で説明する項目の一覧です。

1.トーン構成の前に、トーン(色調)とは何?
2.モノクロを例にした構成
3.トーン構成の例
4.トーン構成の実際のやり方

 

それでは個別に解説していきます。

1.トーン構成の前に、トーン(色調)とは何?

トーン(色調)とは彩度と明度の組み合わせのことです。
(トーンについては別記事で解説しているので関心のある方はご参照ください)

トーン、色調

※クリックすると大きな画像に飛びます

 

有名なトーンのグループとしてはビビット、ストロング、ディープ、ペールなどがあります。
ビビットは派手なイメージ、ペールはパステルカラーに近いイメージです。

 

2.モノクロを例にした構成

分かりやすくするために、いったん白黒で画面構成をする場合を例にとります。

画面全体が白っぽいとか、黒っぽいとメリハリのない絵になります。
石膏デッサンの場合もそうですが、頭部を明暗中の3ブロックに分けて、それぞれのブロックの中でさらに明暗中に分けて描くと、全体の整合性が取れます。

よって風景画などの場合も白黒で描くなら、すべてを同じ明度で描くと面白みがなくなるので、画面の中でブロック分けをすると主役を引き立てやすくなります。

この考え方をトーンに応用するのがトーン構成です。

 

3.トーン構成の例

再度、冒頭のルノワールの絵を載せます。
トーン構成

左側のオリジナルを一見すると、印象派らしい柔らかいトーンで全体が描かれているように見えます。
ところが白黒にすると母親のコートのトーンが強いことが分かります。
子供のトーンは、ペールかライト、ソフト辺りのグループです。
3人以外の景色は中間のトーンを使っていることが分かります。

 

トーンというのは彩度と明度の組み合わせですから、赤と青みたいに色が違っても、同じトーングループに属するということがあります。

例えば、3分割構図で、近景、中景、遠景とブロック分けするとします。
そのとき、手前を派手なトーン、遠くを淡いトーンというふうに、ブロック内では同じトーングループの色を使うと、画面全体で見たときに統一感が出てくる訳です。

さらに例を挙げます。
紅葉の鮮やかな光景を絵にするとき、画面全体を3つのブロックで構成するとします。
近景の野原、中景の紅葉、遠景の空の3つがあったとしましょう。

紅葉のブロックにビビットもしくはストロングのトーンを使うとします。
いろんな色があるけど、そのブロック内は全部同じトーングループに属する色を使うという訳です。

ところが、近景の野原や、遠景の空のブロックまでビビットやストロングのトーンで描くと、観るほうは疲れてしまうんですよね。
もしくは飽きてしまう。

主役と脇役を明確にしないと、主役が活きてこない訳です。
主役である紅葉のブロックはビビットで鮮やかなトーンにして、近景や空はやや抑えたトーン、落ち着いた色合いにすると役割分担ができます。

いやいや、実際に空は秋晴れで突き抜けるような青空だったんだよ、という場合もあるでしょう。
でもそのまま絵にするとツマラナイ感じになる可能性があるので、そこはディレクターとなって構成を練り直したほうがいいんです。

事実をそのまま絵にしたから、いい絵になるとは限りません。
取捨選択や演出も絵を描く上で大切な要素です。

 

4.トーン構成の実際のやり方

※ アクリル絵の具など重ね塗りができる絵の具を前提に説明しています。

① 下書きが終わったら、トーンを幾つのブロックで構成するか検討する

② 全体を中間のトーンで薄っすらと下塗りする

③ トーンの低いブロックから抑えた色、やや暗い色で塗り始める

④ トーンの高い(強い)ブロックには、明度や鮮やかさの高い色を塗る

⑤ 描き進める途中で、同じブロック内のトーンが統一されているか、似通っているか、何度もチェックする

※白は無彩色ですが、もっとも明度が高いため、周囲のトーンを高めてしまいます。
よって、白を広い面積で使う場合は画面全体のトーンを抑えめにするなどの調整が必要です。

 

まとめ

この記事で説明した項目の一覧を再度載せます。

1.トーン構成の前に、トーン(色調)とは何?
2.モノクロを例にした構成
3.トーン構成の例
4.トーン構成の実際のやり方

トーンは明度の彩度の組み合わせのグループのことです。
トーン構成は画面全体を似たようなトーンにするのではなく、明中暗または高中低みたいなブロック分けをして、メリハリを付けたり、どこかで引き締めたりするのを狙うことです。

風景画などの場合、見たまんまを忠実に絵にすれば必ずいい絵になるとは限らないので、演出を加えるディレクターとなって、トーンの構成を考える必要があるということでした。

ちょっとハードルが高いと思った方は、明るいだけ、淡くて優しい感じの色だけで構成する絵はツマラナイかもと覚えておいたら役に立つ日が来るかもです。

 

補足
ココまで説明しといて何ですが、「トーン構成しない」という選択肢もあります。 ^^;

例えば、画面全体をパステル調にする!と決めた場合は、それで押し切っても構いません。
それはそれで統一感がありますから。

トーン構成は一つの選択肢として頭の隅に入れておいてください。

 

               (以上です)

 

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