デッサンとは対象物を鉛筆や木炭などで正確に描き写すことです。
クロッキー(速写)やスケッチに比べて描く時間は格段に伸びます。
形や明暗、細かい部分まで描写するに留まらず、その構造を理解し、質感や本質にまで迫り表現しようとするからです。
この記事で説明する項目の一覧です。
1.デッサンで用意するもの |
それでは個別に解説していきます。
1.デッサンで用意するもの
まず先に列挙します。
鉛筆、消しゴム、紙、モチーフ(対象物)。
それでは個別に説明します。
鉛筆……初心者のうちはHB、2B、4B、6Bがあれば十分です。
必要に応じて買い足せばいいでしょう。
消しゴム……一般的なプラスチック製消しゴムでもいいですが、練り消しゴムがオススメです。
(200~300円程度で買えます)
練り消しならその都度形を整えて、細かい部分まで消すことができるし、濃く塗った所も紙を傷めずに消しやすくなります。
紙……画用紙、ケント紙など。練習ならコピー用紙でもいいでしょう。
初心者のうちは100均のスケッチブックでも十分使えるはずです。
細かく精密な絵を描くなら凸凹の少ないケント紙がオススメ。
100均でA4サイズ4枚入りセットが売っていました。
モチーフ(対象物)……まずは家にある単純な形のものから描きましょう。
どんなに簡単に見えても、描きだしてすぐに、もっと単純な物にしとけばよかったと後悔するはずです。
めげずに完成させましょう。
2.鉛筆の削り方
鉛筆削りで削るのではなく、カッターで削ります。
芯が最低でも1cmは出るように、木の部分を2cmは削るためです。
(合計3cmくらい削る)
長く削る理由は鉛筆を寝かせて持つためです。
鉛筆削りで削ると、木の部分が紙に当たって、それ以上寝かせられないので、カッターで削る必要が出てきます。
3.鉛筆の持ち方
文字を書くときの持ち方と違います。
机などに置いた状態から親指以外の4本指を揃えて、上から持ちます。
そして紙に対してあまり角度を付けないようになるべく寝かせて、書くのではなく薄っすら塗るという感覚で描く。
一度で濃くしないのがコツです。
理由は普通の文字を書く握り方だと紙に強く当たってしまうので、筆圧の調整が難しくなります。
また消すときも、文字を書くときの握り方だと、溝が掘れたみたいになって跡が残ってしまい、なかなか消せなかったりします。
よっぽど細かい所やとくに濃く塗りたい所は普通の文字を書くときの握り方でいいですが、それ以外は上記がオススメ。
どうしても四本指を揃える握り方に慣れないというのであれば、なるべく長く持って(鉛筆のお尻に近い所を持って)、寝かせて描くといいでしょう。
そのほうが余計な力が入らず、薄く塗れます。
4.塗り方
一発で希望の濃さに塗ろうと思わず、少しずつ確認しながら足していきます。
モチーフのもっとも濃い部分を塗るときは鉛筆を立てて、力をやや加えてしっかり濃くしていきます。
広い面積を塗るにはハッチング(並行した斜線の連続で濃くしていく方法)も有効です。
クロスハッチング(バツの字にクロスしている2種類の方向の並行線)も使いながら、少しずつ色を濃くしていきます。
ただし、ハッチングで曲面を表現しようとしないほうがいいです。
逆の言い方をすれば、曲面を表現するためにハッチングを利用しないようにしましょう。
例えば円柱を斜め上から見たとき、左側は右肩下がりのハッチング、右側は右肩上がりのハッチングで描けば、それなりに曲面は表現できますが、それは負けという考え方があります。
そんな斜めのスジは実際の円柱には無いからです。
それより白から黒へのグラデーションで描き分けるようにしたいものです。
5.明暗の塗り分け
ある程度おおまかに形を捉えたら、光の方向を意識して陰影をつけていきます。
全体を明・中・暗でブロック分けして陰影をつけて、それから細かい部分を描き込んでいきましょう。
まず全体の概要となるような明暗のブロック分けをするのです。
上記の石膏像の向かって右の足、膝からふくらはぎの部分を見てください。
ココの陰が一番濃くなっています。
これから推測すると、光は左上から射していると分かります。
頭をリンゴみたいな球形と考えたら、右下の部分が一番暗くなり、左上の部分が一番明るくなります。
中間の部分は中間の明るさになります。
ココで大事なのが、
頭や顔の細かい部分を描きこむ前に、まず右下の部分を暗くしてしまいます。
次に中間帯を中間の暗さで薄く塗っておきます。
これにより全体の陰影の大きな概要をつかむことができるようになります。
次のステップとして暗い部分でもさらに明・中・暗と分けられるはずなので、塗り分けていきます。
最初から細かい部分の着色をすると全体とのバランスを取るのが難しくなるので、このやり方はしっかり覚えておくと便利です。
6.輪郭線という線は無い
円柱でもリンゴでも石膏像でも人物でも、輪郭線という線は実際にはありません。
イラストや漫画なら必要ですが、デッサンには必要ありません。
立方体などなら輪郭線はあるではないかと思われたかもしれないですが、手にとって角や辺を見れば分かるように、とくに黒い線が引かれている訳ではありません。
あくまで面の色が途切れるところが境界線になっているだけで、黒い輪郭線が引かれている訳ではありません。
面で塗り、その途切れる所を少し濃くすることで輪郭を表現するようにしましょう。
7.形の捉え方のコツ
①中心点を見つける
リンゴなど小さなものなら、そのまま着手してもいいですが、石膏像みたいにある程度大きくて複雑なものは、上下左右の中心点をまず見つけたほうが楽です。
その中心と画用紙の中心を合わせると、他の場所を合わせるのも楽になります。
ある程度の大きさのあるモチーフは以下の測量の仕方が便利です。
手を伸ばして鉛筆を持って、片目をつむって測量します。
鉛筆の先端から適度な所に親指の爪を立てて、透かして見るようにしてモチーフに合わせます。
上半分と下半分の長さが大きくなる点を見つけたら、そこをしっかり覚えておきます。
右半分と左半分も同じように測って、中心点を見つけます。
上記の石膏像の場合だと、向かって右の手首の下に丸で囲んだ中心の交わる点があります。
これがモチーフの中心点になります。
これと画用紙の中心を合わせて、他の部分も計測しながら描いていきます。
上記は2分の1の場所を中心点と呼んでいます。
次に4分の1、4分の3の場所も上下左右で見つけます。
これをやると、かなり正確な形をつかむことができます。
最初は面倒と思うかもしれませんが、最初の10分間くらいの測量で、その後ずっと気持よく描けるのであれば、割りのいい先行投資と思いませんか?
1時間以上かけて描きこんだデッサンの形が狂ってたという悲劇はコレで防げますよ!
②縮小(拡大)して、だいたいの大きさを決める
例えば石膏像の場合、画用紙の縦横比と、石膏像の縦横比は一致していないはずでしょうから、紙のサイズに合わせて、対象物を縮小して、だいたいの大きさを決めます。
縦の長さの何割が横の長さになっているか、横の長さの何倍が縦の長さになっているかを何度も確認しましょう。
これを間違うと実際より細い顔、太った顔になってしまいます。
③次に短い直線で全体を囲んでいく
多角形の中に対象物が入る感じです。
いきなり曲線で描くのではなく、短い直線で形と角度を捉えます。
片目をつぶって対象物の角度を鉛筆で合わせて、そのままの角度を維持したまま紙の上に持ってきて、線を引きます。
④アタリ(大まかな形の薄い下書き)を取る
慣れないうちは何本も引くことになるので薄く描き、コレだ!という線を見つけたら、少し濃く引いておきましょう。
輪郭線は実際には存在しないので濃すぎるのは不自然です。
⑤あまり一箇所にこだわり過ぎない
この部分を完成させない限り、次にはいかないと決めるのもいいですが、一箇所に執着すると煮詰まってしまい、盲目的になるので、色んな部分を順ぐりに少しずつ詳細に描き込みましょう。
一箇所から離れてしばらくすると間違いに気づくので、そうしたらまた元の場所を描き込めばいいでしょう。
補足
デッサンを詳しく解説したら、1冊の本になります。
初心者の場合は上記にあるものを愚直に繰り返し練習するだけでも大変なので、まずはやってみることです。
情報収集はそこそこにして、まずは実際に手を動かすことが大事ですよ。
もう少しデッサンについて知りたい場合は以下もどうぞ。
→「デッサンの塗り方、技法6選」
クロッキーやスケッチとの違いが気になる場合は以下もどうぞ。
→「クロッキー、スケッチ、デッサンの違い」
(以上です)