アクリル絵の具は重ね塗りができるので、水彩絵の具ほど塗る順番が厳密に決まっている訳ではありません。
ですが作業効率のいい塗る順番はあるので以下、解説します。
この記事で説明する項目の一覧です。
1.背景から近景の順で塗る |
それでは個別に解説していきます。
1.背景から近景の順で塗る
夏の海、たとえば『砂浜、海、空、入道雲』を描く場合。
描く順番は、空→雲→沖の海→砂浜→手前の海……がオススメです。
①空のベタ塗り(平塗り)をする
②ティッシュなどで入道雲の辺りを拭う。
ブドウの房を逆さにした形をイメージしながら絵の具を取り去っていく。
光の当たる上側を白、陰になる下側を薄い灰色で着色
③沖の海。
マスキングテープを使えば水平線は簡単に描けます
④砂浜。
乾いた所は白っぽい茶色、海水で濡れた所は茶色。
南の島の砂浜ならもっと全体的に白っぽく塗る。
⑤波打ち際~浅い海。
海は手前ほど青に緑を混ぜ、沖に行くほど青を濃く。
波打ち際は所々砂浜の色を置くことで透けて見える。
白を曲線に並べ、崩れて泡立つ波を描く。
※奥から順に描いていくのは、例えば雲と空の場合、雲を先に描いてしまうとその輪郭線にそって空を描かなくてはならず、非常に手間がかかるため。
また奥ほど大雑把に色を乗せていけるので、作業の取っ掛かりとしても始めやすいからです。
2.大きな部分から小さな部分の順で塗る
例えば、花畑の中にある主役の一本を描く場合です。
全部どこかが重なり合っているとします。
① 空や山々などの遠景、森などの中景を描く
② 花畑の土を塗る
③葉っぱの色を全体的に塗る(奥ほど淡く、手前ほど緑を濃く)
④花畑の花の色を全体的に塗る。
何となく花びらの形が分かるように(奥ほど淡く、手前ほど鮮やかな色で)
⑤主役となる花の花びらを描く。
一枚の花びらも場所によって色が微妙に異なるので、塗り分ける。
⑥主役の花のオシベとメシベを面相筆などで描く。
※逆の順番、例えばオシベとメシベを描いた後で、花びらを着色する手間を想像したら気が遠くなります。
上記1.の背景から近景の順と重なる部分もありますが、集中力という面でも手前を後で描くほうが楽です。
3.不透明色から透明色
アクリル絵の具の長所を活かすには不透明色の上に透明色を塗る順番がオススメです。
透明色の上に不透明色を塗ると、せっかくの透明性を活かせなくなります。
アクリル絵の具は重ね塗りできるので、順番はどちらでもよく、表現に適した色の順で塗っても構いません。
その一方、水彩絵の具は先に明るい色を塗りなさいと指導されるようです。
明るい色を先に塗って上から暗い色を乗せるのはできるけど、逆は難しいからです。
暗い色の上に水を多く含んだ明るい色を塗れば透けるし、下の色が溶けて滲んでしまい、混ざって汚い色になる場合があります。
アクリル絵の具は乾けば重ね塗りできるので、その点は楽です。
ただし色によって透明度の違いがあります。
色によっては透明、半透明、不透明と3種類があります。
暗い色の上に明るい透明色を塗ると、何度も重ね塗りする必要がありますが、それさえ覚悟していれば塗る順番は神経質にならなくても大丈夫です。
不透明の白(チタニウムホワイト)で塗りつぶして明るい色を乗せるという方法もあります。
下地を透けて見せるという透明色が持つ魅力が半減してしまいますが、やってはいけないという決まりはありません。
よって、アクリル絵の具の場合、色を塗る順番は厳密なものではなく、表現によってお好みで使い分ければいいんです。
失敗したと思っても、手間さえ惜しまなければ、何度でも修正できます。
※アクリル絵の具の透明と不透明については別記事で解説していますので、よかったらどうぞ。
→「アクリル絵の具には透明と不透明があるの? 5つの質問に答えます」
4.人物画の塗る順番
絶対ではないので、ご参考までに。
顔から塗る。そこから髪、服、背景を描く。
前髪は顔の手前に来るので、奥にあるものを先に描くのと同じ。
額を先に塗って、その上から前髪を塗ります。
中心となる顔の肌の色を定めて、そこから周囲へ波及するように色を決めていくといいでしょう。
厳密に言えば、瞳の色と肌の色の相互作用、バランスも気をつけるともっとよくなります。
5.木の塗る順番(木の緑を三色で描く場合)
日陰の部分、中間色、陽の当たる部分の順で描く。
それぞれ黒っぽい緑、緑、黄緑の三色を使うとして……
①ブドウの房のように大きな球体がいっぱい木になっているのを想像してもらって、球体の奥と球体の下の部分は日陰になります。
そこをまず黒っぽい緑で塗る。土台となるイメージです。
②球体の中央部分を中間色の緑で塗る
③ 陽が強く当たる上の部分を黄緑で塗る
※日陰を先に塗るのは、実際に目に見える姿も日陰部分が奥だからです。
先に明るい緑を塗った後に、日陰部分を描き足すと筆の跡、穂先の跡がどうしても不自然になります。
尖った穂先は葉っぱの先端を表現するのには向いていますが、隠れているはずの日陰を描くには向いていません。
土台となる日陰部分を先に塗ったほうがイメージを掴みやすいので作業効率もよくなります。
■まとめ
奥から手前、大きな所から小さな所や精密な所、(厳密ではないけど)明るい色から暗い色、人物画は顔が先で脇役は後、土台を塗って後から手前の色を乗せていく……の順。
絶対ではないので、試行錯誤しながら試してください。
(以上です)