アクリル絵の具の基本

■アクリル絵の具とは 特徴10選、初心者むけの理由など

2022年4月22日

アクリル絵の具とは、特徴

アクリル絵の具とはアクリル樹脂と顔料(色の素)を原料とする水溶性の絵の具のことです。
水彩絵の具みたいに多めの水で溶いて描くこともできれば、ほとんど水を使わないで油絵の具みたいに使うことでもできます。

この記事ではアクリル絵の具の特徴、長所と短所なども含めて解説しています。

 

この記事で説明する項目の一覧です。

1.アクリル絵の具とは(概要と結論)
2.アクリル絵の具の特徴10選
3.アクリル絵の具が初心者に扱いやすい理由
4.アクリル絵の具の取扱注意事項

※詳しい説明の前に断わっておきますが、アクリル絵の具とアクリルガッシュは別物です。
このサイトではアクリル絵の具を中心に解説しています。
アクリルガッシュはあまりオススメしないので、その理由もこの記事で解説します。

 

それでは個別に解説していきます。

1.アクリル絵の具とは(概要と結論)

①アクリル絵の具は顔料とアクリル樹脂を原料とする絵の具です。

②乾けば耐水性になるので重ね塗りが何度でもできます。
→ 水彩絵の具から乗り換える人が多い理由の一つです。

③10分ほどで乾き始めるので作業効率がいい。待ち時間が少なくて済みます。
→ 油絵の具から乗り換える人が多い理由の一つです。

④何度でも重ね塗りや修正が可能
→ 初心者に扱いやすいといわれる最大の理由です。。

⑤注意事項。
乾いたら水に溶けないので、筆が固まって使い物にならなくなります。
服などに着いて放置したら水では落ちなくなります。
カドミウムなどの有毒色素を使っている色もあるので、捨てるときは環境に配慮が必要で、とくにお子さんは取扱注意です。

 

2.アクリル絵の具の特徴10選

1)原料は顔料とアクリル樹脂です。
顔料とは色の成分です。
アクリル樹脂をもっと詳しくいうとアクリルエマルションです。
アクリルエマルションとはアクリル樹脂を水に乳化・分散させたもので、顔料を保持するための接着剤のようなものです。
エマルションという聞き慣れない言葉が面倒な場合は、ざっくり顔料とアクリル樹脂から作られていると覚えるだけで十分です。

 

2)発色が鮮やか。
アクリル樹脂は乾くと透明になるので顔料の色がそのまま現れて、長く保持されます。
ちょっとテカテカして派手すぎると感じる場合は、ツヤを抑える添加剤も販売されているので調整できます。

 

3)耐久性、耐光性があるので、長期保存に向いています。
アクリルガッシュは耐久性、耐光性が劣ります。
ヒビ割れや退色もありうるので、当サイトでアクリルガッシュをオススメしないのがこの理由です。

 

4)すぐ乾く。
濡れている時間が5~10分間くらいと短いので、グラデーションなど隣の色と混ぜ合わせる必要があるときは手早く描く必要があります。
リターディングメディウムという乾燥を遅らせる添加剤もあるので、必要に応じて買い足すこともできます。

 

5)一度乾けば水に溶けない。
溶けないので重ね塗りが可能です。
水彩絵の具やポスターカラーは乾燥後でも多めの水分量で塗り重ねると下の色が溶けて滲んでしまいますが、アクリル絵の具は大丈夫です。
乾けば水に溶けないので、屋外のものにも使えます。

 

6)色んな物に描ける。
石やブロック塀などにも描けるので立体作品にも使えます。
金属やガラスなどツルツルした表面のものは剥がれるので適しませんが、それでも紙やすり(サンドペーパー)などで表面に傷をつけて下地剤を併用すれば塗ることができます。

 

7)下地を生かした塗り重ねができる。
透明、半透明の色を重ね塗りをすると、下の色が透けて見えます。
逆にいえば、一発で下地を覆い隠すことができないので、ベタ塗り(平塗り)は何度も重ねて塗りムラを減らす必要があります。
なお不透明の色(チタニウムホワイトなど)を塗って、その上から塗りたい色を乗せれば比較的簡単に下地を隠すことができます。

 

8)下の色が見えるのは長所でもあります。
一発で下地を覆い隠せないという書き方をしたのでデメリットみたいに聞こえるかもしれませんが、実はコレが長所でもあります。
薄く溶いた色を何度も塗り重ねることができるので、重層的な深みのある色合いを表現できます。
これができるのは他には油絵の具くらいですが、乾燥に最低でも1週間くらいかかるので、何度も何度も重ね塗りをするなら、何ヵ月もかかるのを覚悟しなくてはなりません。
手軽に複雑な色を表現できるのがアクリル絵の具の最大の魅力です。

 

9)物理的な混色ではなく、光学的な混色ができる
パレットで事前に混ぜた色だけでなく、カラーセロファンを何枚も重ねたような複雑な混色ができます。
青の下地に薄く溶いた黄色を塗り、ドライヤーによる乾燥と再度の塗りを何度も繰り返せば、青緑~緑~黄緑へと徐々に変化します。

しかも単に緑といっても、最初から青と黄色をパレット上で混色して作った緑とは違った深みのある色になり、最初からベタッと塗ったものとは全く違う表情になります。
これを油絵の具でやろうとすると、ドライヤーでの乾燥が使えない為にとてつもなく時間がかかります。

 

10)多彩な描き方ができる
水彩絵の具のような淡い描き方も、油絵の具のような力強く盛り上げたような描き方もできます。
前者は水を多くすれば、にじみやボカシの技法を使えるし、後者はメディウムという添加剤を使えば、グッと盛り上げることができます。

ただし、それぞれの絵の具特有の発色や特徴があるので、アクリル絵の具で完全に代替できる訳ではありません。
水彩絵の具には水彩絵の具の良さが、油絵の具には油絵の具の良さがあります。

 

3.アクリル絵の具が初心者に扱いやすい理由

①乾いたら、重ね塗りができるので、修正が簡単。
失敗してもなかったことにできます。
水彩絵の具は一発勝負みたいな集中力と技術力が要求されますが、アクリル絵の具は失敗したら、やり直せばいいだけです。

 

②重ね塗りができるので塗る順番がテキトーでも何とかなる。
水彩絵の具の場合は、先に暗い色を塗った後に白などの明るい色を乗せても少し溶けて混ざってしまうので難しいところがありますが、アクリル絵の具は乾けば簡単に明るい色を乗せることができます。

 

③油絵の具みたいな化学的な知識は不要。
油絵の具は知識を身に付けないと黄変や剥落の可能性があります。
化学反応で混ぜてはいけない色があるとか、乾性油の使う量を最初と最後のほうではコントロールしなきゃいけないとか、いろいろ決まり事があります。
その点アクリル絵の具は最初から最後まで知識がなくても何とかなります。

 

④100均でも入手可能
100均には色鉛筆やパステル、水彩絵の具に加え、アクリル絵の具やアクリルガッシュも売っています(ある程度、大きい店なら)。
初心者の方はアクリル絵の具とアクリルガッシュの違いや好みが分からなくて当然ですから、両方とも試すにしても経済的な負担が少なくて済みます。
相性や好みもあるので、合う、合わないを確かめるには100均は便利です。

 

4.アクリル絵の具の取扱注意事項

1)乾燥したら水に溶けない。
洋服などにについたらすぐ水洗いする必要があります。
床に落とした場合、すぐに拭きとらないと、こびりついて取れなくなります。

 

2) 筆も10分間以上放置するのは危険。
毛先に絵の具が付いたまま休憩や他の用事をするのは止めたほうがいいです。
気づいたときに急いで水洗いしても毛先が広がってしまうことがあります。
面相筆など細い筆ほど頻繁に水洗いしたほうがいいです。

 

3)専用の剥離剤が売ってある
こびり付いたアクリル絵の具をどうしても落としたい場合はリムーバーなどの剥離剤が売っているので、ある程度は落とせます。
シンナーや除光液でも落ちるみたいですが、取り扱いには注意してください。
筆の根本や、布地の繊維の奥にまで染み込んだものを完全に落とすのは難しいので、そうならないように気をつけてください。

 

4)有毒性のある色もある
カドミウムを含む色(黄色など)があるので、アクリル絵の具の付いた手で口の周りを触らないでください。
また使用後の筆やパレットをそのまま洗って下水に流すのは環境に負荷をかけるので、古布やティッシュなどで拭って、少しでも付いている絵の具を落としてから洗いましょう。

 

 

まとめ

アクリル絵の具は決まりが少なく、自由に描ける素材です。
使い方も自由自在。
いきなり高価なセットを揃えるのもいいですが、とりあえず100均で売っているもので試してみるのもオススメ。
実際に描いたら、その楽しさに気づくはずですよ。

 

補足
よく混同されるアクリルガッシュについては別記事で解説していますので、よかったらどうぞ
→「アクリル絵の具とアクリルガッシュの違い

 

               (以上です)

 

-アクリル絵の具の基本

© 2024 アクリル絵の具で自由画人