絵を描くとき、形が歪んでいるとガッカリしてしまいます。
着色したりして終盤に近づいた頃に気づくと、ガッカリどころではなく、情けなくなったりします。
デッサンで形を取れない、捉えられないというのは致命的で自分には才能がないかもと思いたくなるのは分かります。
筆者もそうでしたから。
でも理由が分かれば解決法も見えてきます。
この記事で説明する項目の一覧です。
◎形が取れない、歪んでいる理由 |
それでは個別に解説していきます。
1.縦横比が間違っている
最大の原因なので一番先に描きます。
縦横比が間違っているのが最も形を歪ませる理由です。
縦横比が合っているなら、形が大きくズレることは少なくなります。
石膏デッサンや人物画の場合、頭頂部から描く一番下までの縦の長さと、肩幅の長さの比率が間違っていることが考えられます。
頭だけでいえば頭頂部から顎までの長さと、頭の幅の比率が間違っている場合が考えられます。
縦横比が間違う原因は測ってないからです。
縦長のモチーフの場合、横幅は縦の何割なのか、縦の長さは横幅の何倍なのか、2通りの測り方があります。
2.思い込み、いきなり細部を描いている
思い込みは左脳のしわざです。
左脳は記号化が得意で、人間の頭は楕円形だよね、目は葉っぱみたいな形が2つ横に並んで、真ん中に縦長の三角形の鼻があるよねと記憶で描かせようとします。
記憶で描かせるので、観察できなくしてしまうのです。
思い込みで描く人の特徴として人物デッサンの場合、どんなモデルさんが来ても、顔がすべて似てしまうという現象があります。
本人はしっかり観察しているつもりでも、実際は記号化したパーツを思い出しながら描いているということです。
思い込みがなかったとしても、いきなり細部に着手してしまうと、人物画の場合、目の位置、大きさ、口や鼻、輪郭からの距離などを測量せずに描くことになっています。
3.短い線を繋いで輪郭を描いている
木を見て森を見ずの状態です。
いきなり細部を描くことと似ていますが、輪郭線を細かい線で繋ぐと徐々に角度や長さがズレてしまいます。
小学生の頃、こうした短い線をつないで輪郭線を描いている同級生が多かった記憶があります。
輪郭線の下書きをまずざっくり描いて、縦横比などをチェックしてOKなら本格的な輪郭線に着手するという段階を踏まずに、いきなり本番の輪郭線を描こうとしているので、そりゃ形は歪むわなと今なら分かります。
4.計測する基準点がブレている
人物画の場合、基準点を決める方法があります。
顔や身体のどこか特定の場所と紙やキャンバスの場所を決めて、リンクさせて、そこから周囲に発展させていくやり方です。
人物画の基準点は以下の2つが考えられます。
①紙の中心とモチーフの中心(縦横の中心)を合わせるという方法
②目尻とか鼻の頂点とかある特定のポイントを定める方法
どちらでもいいし、特定のポイントは好きに設定しても構いません。
ただし一度決めたら動かさないようにしましょう。
そうしないと測量がズレてくるので、序盤と終盤で形が変わってしまいます。
5.紙に対して直角の姿勢じゃない
紙やキャンバス(以下、画面といいます)を机の上に水平に置いて描く場合があります。
このとき手前と奥とでは目からの距離が違います。
自分では真ん丸の円を描いていたつもりが、画面を立てて見たら縦長の楕円形になっていたということがあります。
この現象は画面と目が近い場合、さらに顕著になります。
コタツやローテーブルで描くと、この現象が起きやすくなります。
画面の手前と目との距離は20cmくらいなのに、画面の上端では40cmくらい離れるのではないでしょうか。
そりゃ、形は歪みますよ。
6.正中線、軸、仰俯角を捉えていない
人物画の場合、一番のポイントとなる顔の向き、とくに上下方向=仰俯角(ぎょうふかく)がズレていると形が歪んで見えます。
まず人物の左右の目尻どうしを直線で結んでください。
目頭どうしだと距離が近くて、少しのズレでも角度のブレが大きくなるので、目尻どうしがオススメです。
大切なことなので、もう一度言います。
人物の左右の目尻どうしを直線で結んでください。
その直線が右上がりか右下がりかをチェックしましょう。
次に正中線を観察します。
頭頂部から眉間、鼻、口、顎に渡る顔の縦の中心線を見つけるのです。
頭を卵型の地球儀に例えて、目の直線を緯度の線(緯線)にします。
正中線と目の緯線を頭の中でイメージしてみてください。
これにより、やや見上げた状態(仰角:ぎょうかく)なのか、うつむき気味(俯角:ふかく)なのかが分かり、モデルさんの頭の中を貫く軸が見えてきます。
長くなったので、後編に分けます。